国が報酬をいくら増額しても、潤うのは法人や事業所だけ!

介護福祉士 資格証

 

介護福祉士として日々現場で働く中で、給与や待遇の問題は常に話題になります。

「介護士の賃金を上げるべき」という声は選挙期間中に特に多く聞かれますが、実際に報酬が増額されても現場で働く私たちにその恩恵がどれほど届いているのか、疑問を感じることが多々あります。

 

報酬が法人や事業所に吸収され、現場職員にはわずかな還元しかない状況では、介護業界の根本的な問題は解決しません。

今回は、なぜ報酬が現場に行き届かないのか、その原因と対策について掘り下げていきます。

 

報酬増額の現実――潤うのは法人だけ?

 

報酬が増額されると、表向きには「介護士の待遇が改善される」と期待されます。

しかし、実際には多くの場合、そのお金の大部分が法人や事業所の運営費として吸収され、現場職員への賃金改善はわずかにとどまります。

たとえば、処遇改善加算が導入された当初、私は大きな期待を寄せていましたが、実際には基本給が少し上がっただけで、それ以上の改善は見られませんでした。

「現場を潤すため」という名目で導入された制度も、実態としては事業所側の利益を守るために使われているように感じます。

 

 

 

管理職と現場職員の格差

 

私の勤務する施設では、管理職と現場職員の待遇の差が大きいことに悩まされています。

管理職になると現場に出る機会が減り、責任や労力も軽減される一方で、給与は増加する仕組みになっています。

 

一方、現場で直接利用者と接する職員は多忙を極め、体力的にも精神的にも負担が大きいにもかかわらず、その努力が十分に評価されていません。

 

こうした格差が、現場職員のモチベーションを下げ、離職率の高さにもつながっているのではないでしょうか。

特に疑問に思うのは、報酬が増額された際に管理職が優先的にその恩恵を受けることです。

普段現場にほとんど入らない上層部が、自分たちの取り分を確保するためにだけ動いているように見える状況に、不信感を抱かざるを得ません。

 

 

 

現場職員に直接還元される仕組みの重要性

 

介護報酬を増額する際には、法人や事業所を経由せず、現場職員に直接還元される仕組みが不可欠です。

たとえば、マイナンバーを活用して非課税で職員に加算分を振り込む制度を導入すれば、中間での搾取を防ぎ、現場に働く職員が正当に報酬を受け取ることが可能になります。

こうした仕組みがあれば、「現場で働く意味がない」と感じる職員も減り、業界全体の士気向上につながるでしょう。

 

また、職員が自分の報酬がどのように決定されているのかを把握できるよう、処遇改善加算の使途を公開する制度も必要です。

法人や事業所が加算分をどのように使っているかを透明化することで、不信感を払拭し、適切な分配が促進されるはずです。

 

 

 

外国人労働者への依存とそのリスク

 

現在、日本の介護業界は慢性的な人手不足を外国人労働者で補っています。

しかし、日本の賃金水準や物価のバランスが悪化しているため、他国と比較して日本を選ぶ魅力が低下しているのも現実です。

韓国や台湾など、同様に外国人労働力に頼る国々は、日本よりも高い賃金やより良い待遇を提供しており、今後日本に来る外国人労働者の数が減る可能性があります。

 

円安の影響も深刻です。

たとえば、ドル建ての報酬が高い国に出稼ぎに行く方が、外国人労働者にとって魅力的になる状況が続いています。

このままでは、外国人労働者すら確保できなくなり、介護現場の人手不足がさらに悪化する可能性が高まります。

 

 

 

利用者負担の増加と政策の矛盾

 

報酬を増額する政策は一見理にかなっているように見えますが、それには矛盾も潜んでいます。

 

たとえば、介護報酬が上がることで利用者の自己負担額が増えるケースがあります。

結果的に、低所得層の利用者がサービスを受けにくくなるリスクが生じるのです。

また、税金で賄おうとすれば、若者世代の負担が増加するなど、社会全体への影響も無視できません。

簡単に「報酬を上げれば解決する」という発想ではなく、利用者や職員双方に配慮したバランスの取れた政策が必要です。

 

 

 

政策の透明性を高める必要性

 

処遇改善加算や介護報酬の使途を公開する制度を義務化すれば、現場職員や利用者がそのお金の流れを把握できるようになります。

特に社会福祉法人のような公的な性格を持つ事業体に対しては、幹部職員の給与公開も義務付けるべきです。

これにより、不公平感を減らし、報酬が適切に分配されているかを確認できる仕組みが整います。

 

 

 

若者世代や未来への影響を考えた制度設計

 

介護業界の崩壊を防ぐためには、若者世代の負担を過剰に増やさず、持続可能な制度設計が必要です。

国庫負担を増やすことや、処遇改善加算を個人に直接支給する仕組みを導入することで、現場職員が安心して働ける環境を整えるべきです。

 

 

 

まとめ

 

介護報酬をいくら増額しても、現場が直接潤わなければ意味がありません。

現場の職員が「報酬増額の恩恵を受けている」と実感できる仕組みを作ることが、介護業界の未来を明るくする第一歩です。

利用者の生活を支えるために、まず現場職員の生活を支える制度改革が求められています。

介護福祉士として、この問題を無視するわけにはいきません。

一人ひとりの努力が正当に評価される社会を目指し、声を上げ続けていくことが必要です。