こんにちは、介護福祉士みきこです。
介護現場では、利用者を守ることが当然の使命として求められています。
しかし、その陰で介護職員が負う心や体の傷について、社会がどれほど認識しているでしょうか。
利用者に生じた小さな傷が「虐待」と疑われる一方で、職員が負った傷や精神的な苦しみは「職業の一部」として片付けられる。
このような矛盾が日常化している現実に、私たちはどのように立ち向かえばよいのでしょうか。
本稿では、この問題を深掘りし、介護現場の課題とその改善策について考えます。
利用者の傷は「虐待」、職員の傷は「無視」される現実
介護現場で最も不公平に感じるのは、利用者の体に傷がついた場合、すぐに職員の責任が問われるのに対し、職員が暴力を受けて傷を負った場合はほとんど注目されないという事実。
利用者の内出血や軽い傷でさえ「虐待ではないか」と調査が行われ、職員が厳しく問われる一方で、職員が噛まれたり殴られたりしてできた青あざは、「よくあること」として流されがちです。
なぜ、職員が負った傷は正当に扱われないのでしょうか?
これは、介護職員に対する社会の「献身」を求める意識と無関係ではありません。
「介護職員は人を助けるために働いている」というイメージが、いつの間にか「どんな犠牲も当然」という偏見に繋がっています。
しかし、職員もまた人間。
家庭があり、感情があり、傷つけば痛みも感じます。それにもかかわらず、社会は「職員の傷」を真剣に取り扱おうとしません。
このような現実に直面すると、「自分は守られていない」という無力感が押し寄せてきます。
暴力を受ける職員、対策のない施設
暴力や暴言は、介護現場では珍しいことではありません。
例えば、利用者が不穏状態になった時、殴られる、蹴られる、つねられるといった身体的な暴力が日常的に発生します。
さらには、暴言やセクハラ発言、唾を吐かれるなどの行為も頻繁に起こります。
特に力の強い男性利用者や認知症を患う利用者からの攻撃性は、職員の大きな負担となります。
施設の中には、こうした暴力を受けた職員に対して適切なフォローを行わないところもあります。
ある職員は、「噛まれて歯形が残ったが、病院に行くよう促されることもなく、施設側からの対応は一切無かった」と語っています。
また、暴力による怪我が労災として認定されず、有給休暇で処理されるケースもあります。
これでは職員は安心して働けません。
暴力のリスクがある環境で働く以上、施設側は具体的な対策を講じる責任があります。
綺麗事では済まされない現場の苦労
介護現場の問題について相談すると、「どうすればいいと思う?」と現場の職員に意見を丸投げする上司が少なくありません。
また、「大変だよね。でも利用者さんもかわいそうだから」と綺麗事で済ませようとする姿勢に、職員は苛立ちを感じています。
現場の苦労を理解しようとせず、具体的な解決策を示さない対応は、職員にさらなるストレスを与えます。
事実、介護の現場は綺麗事では回りません。
利用者に敬意を持って接することは当然ですが、それだけでは暴力のリスクを防ぐことはできません。
施設運営側が「現場の声」に真剣に耳を傾け、現実的な対策を立てることが必要不可欠です。
「やりがい」で済まされる介護職員の負担
「介護はやりがいのある仕事」とよく言われます。
それ自体は間違いではありません。
しかし、「やりがい」が職員の負担を正当化する理由になってはいけません。
利用者から暴力を受け、心身ともに疲弊している職員に「やりがいがあるから」と言うのは、現場の実態を無視した無責任な発言です。
介護の仕事に携わる人々は、誰しもが「やりがい」だけで働いているわけではありません。
家族を養うため、生活のために働いている人も多いです。
それにもかかわらず、暴力や暴言を受けながら働く状況に耐える職員たちに、「やりがいがあるから大丈夫」という一言で片付けるのは無神経と言わざるを得ません。
専門性が認められない現実
介護職員の仕事には高い専門性が求められます。
利用者とのコミュニケーション能力、トラブルを回避するスキル、介護技術、さらには精神的な強さも必要です。
しかし、介護士の専門性はまだ社会的に十分に評価されていないと感じます。
例えば、利用者が暴力的になった場合、その場を収めるためには迅速かつ的確な判断が求められます。
これは高度なスキルであり、簡単に身につくものではありません。
それにもかかわらず、介護職員は「誰にでもできる仕事」と見られることが多いのが現実です。
この認識を変えることが、職員の地位向上に繋がります。
精神的負担が肉体的な傷以上に大きい理由
利用者からの暴力や暴言は、職員の心に深い傷を残します。
「こんなに一生懸命やっているのに、どうして自分がこんな目に遭わなければならないのか」と自問する日々が続きます。
特に、人として敬意を持って接している職員ほど、暴力や暴言による精神的なダメージは大きくなります。
また、暴力や暴言に対応するたびに、「また同じことが起きるかもしれない」という不安が頭をよぎります。
これが積み重なると、職員は慢性的なストレスにさらされ、メンタルヘルスの問題を抱えることも少なくありません。
この精神的負担を軽減するためには、現場での安全対策が必要です。
危険手当や報酬の見直しが必要
「勲章なんていらない、危険手当をください」という職員の声は、決して冗談ではありません。
暴力や暴言を受けるリスクの高い環境で働く以上、それに見合った報酬が求められます。
しかし、現在の介護職員の給料は決して高いとは言えず、リスクに対する手当も十分ではありません。
介護職員の待遇を改善することは、人手不足の解消にも繋がります。
「給料が低い」「待遇が悪い」という理由で介護職を離れる人が増える中、危険手当や報酬の見直しを行うことは、職場の安全性を高めるだけでなく、職員のモチベーション向上にも繋がります。
超高齢社会で変わるべき介護の仕組み
日本は超高齢社会に突入し、介護の需要が急速に高まっています。
しかし、現場の人手不足や職員の負担が解消されないままでは、持続可能な介護の提供は難しいでしょう。
介護保険の仕組みや施設運営の方針を見直し、職員が安心して働ける環境を整えることが急務です。
また、介護職員の声を社会全体で拾い上げる仕組みが必要です。
現場の問題を放置したままでは、利用者の安全も職員の安全も守れません。
まとめ
介護職員が直面する問題は、決して他人事ではありません。
利用者の安全を守ると同時に、職員の安全も守る仕組みを作ることが、超高齢社会を支えるために必要です。
私たちはこの現実をどう考え、どう変えていくべきなのでしょうか。
あなたの意見が、この問題を解決するための一歩になるかもしれません。