
介護職で働く多くの人が感じている問題、それが「サービス残業」の存在です。
申し送りやレクリエーション準備のための早出、休憩を削った業務、休日出勤など、「当たり前」のように行われるこれらの行為は、本当に仕方のないことなのでしょうか?
今回は、介護職におけるサービス残業の実態やその背景、そして改善の可能性について詳しく考えていきます。
サービス残業はなぜ「当たり前」とされるのか?
介護現場でサービス残業が「当たり前」とされる背景には、いくつかの要因があります。
そのひとつが「利用者のため」という強い責任感。
介護の仕事は利用者さんの生活に直結するため、どうしても「ここで手を抜けない」「自分がやらなければ」という意識が働いてしまいます。
また、職場の文化や慣習も影響しています。新人の頃から、周囲の職員が当たり前のように早出や時間外作業をしていると、それに合わせざるを得ない状況が生まれます。
例えば、申し送りを時間内に終わらせるのが難しい場合、自然と勤務時間外で行うことが常態化してしまうのです。
さらに、指摘しづらい空気感も問題です。「今さらこんなことを言っても無駄だろう」と諦めてしまう人が多く、声を上げる機会が失われています。
結果として、サービス残業が「仕方がないもの」として受け入れられてしまうのです。
「早く来て当然」の申し送りは問題ではないか?
介護の現場では、「申し送りのために15分早く来て」という指示が、ほぼ当たり前のように出されることがあります。
しかし、この「早出」は本来無給で行うべきではありません。
勤務時間外に行うのであれば、労働時間として賃金が支払われるべきです。
実際には、このような早出に疑問を持つ職員も少なくありません。
例えば、「申し送りの時間が勤務時間内に収まらないのは、業務の管理が不十分な証拠では?」という意見が出ることもあります。
それにもかかわらず、「みんながやっているから」と言われてしまうと、反論するのが難しいのが現状です。
早出を当然視する風潮を改善するには、まず「申し送りの簡略化」や「効率的な情報共有の仕組み作り」が必要。
また、上司やリーダーが率先して早出をしない姿勢を見せることで、職場全体の空気を変えることができるでしょう。
サービス残業を支える「休憩の削減」問題
介護職では、休憩時間が確保されないことが多いのも事実です。
利用者さんのケアが優先される現場では、忙しさのあまり休憩が取れず、その時間を作業に充てる職員が少なくありません。
たとえば、夜勤中に記録作業や申し送りの準備をするため、実質的に休憩が取れないことがあります。
また、日中の業務が忙しい場合も、休憩中にレクリエーションの準備や資料作成を行うことが珍しくありません。こうした状況は、精神的にも肉体的にも職員に負担をかけます。
「休憩時間が業務時間に含まれる」と認識されるべきなのに、それを「当たり前」として放置していることが問題です。
労働基準法では、休憩時間をしっかりと取ることが義務付けられています。
それでも、現場では「利用者がいるから仕方ない」として、違法な状況が続いているケースも見られます。
レクリエーション準備の「サービス労働」と自腹出費
介護施設では、利用者さんに楽しんでもらうためのレクリエーションが頻繁に行われます。
これ自体は素晴らしい取り組みですが、その準備が職員の「サービス労働」になっている場合が多いのが問題です。
例えば、レクリエーションで使う備品を休日に買い出しに行ったり、準備を自宅で行ったりすることがあります。
さらに、一部の職員は自腹で備品を購入しているというケースも聞いています。
職場の予算が限られているため、利用者のためを思う職員が負担を引き受けてしまうのです。
こうした状況を改善するには、施設側が十分な予算を確保し、職員が自腹で何かを購入しなくても済む仕組みを作ることが必要です。
また、準備のための時間を業務時間内に確保することも重要です。
「当たり前」が働きにくさを生む悪循環
介護現場で「サービス残業」や「サービス早出」が当たり前になっている理由のひとつは、職場の文化や価値観にあります。
例えば、定時に出勤して定時に退勤すると、周囲から「やる気がない」と思われる場合があります。
このような風潮は、新人職員や若い世代にとって特に負担となります。
「当たり前」とされる慣習に合わせるために、無理をしてしまうことが多いのです。結果として、職員が疲弊し、離職率が高まる原因となっています。
働き方改革はどこまで進んでいるのか?
最近では、介護業界でも働き方改革が少しずつ進んでいます。
たとえば、申し送りの簡略化や、業務時間内で仕事を終わらせる仕組み作りが進んでいる施設もあります。
また、労働基準法を遵守するためのルール作りが行われることも増えてきました。
しかし、こうした取り組みがすべての施設で行われているわけではありません。
現場のリーダーや経営者の意識が低い場合、働き方改革が進まないこともあります。
サービス残業をなくすためにできること
サービス残業をなくすためには、職場全体で取り組む必要があります。
まず、職員が声を上げやすい環境を作ることが大切です。「おかしい」と感じたことを相談できる雰囲気があれば、改善の第一歩を踏み出せます。
また、施設側が業務の効率化を図り、無駄な作業を減らすことも重要です。
業務フローの見直しによって、業務時間を短縮する取り組みが求められますが実際問題難しいでしょうね・・。
まとめ
介護職におけるサービス残業やサービス早出は、決して「当たり前」ではありません。
これを当たり前として受け入れるのではなく、改善に向けて声を上げることが重要です。
職場全体で働きやすい環境を作ることで、職員の負担を軽減し、利用者さんにより良いケアを提供することができます。
あなたの職場でも、ぜひ改善に向けた取り組みを始めてみませんか?