こんにちは、介護福祉士みきこです。
介護の現場では、利用者さんが突然「家に帰りたい」と強い帰宅願望を訴えることがあります。
このような状況は特に夜勤中に起きることが多く、介護職員にとっては大きな試練となることもしばしば。
しかし、適切な対応を取れば、利用者さんの気持ちを落ち着けることができ、施設内での安心感を高めることが可能です。
今回は、帰宅願望に対する効果的なアプローチや裏ワザを、具体的な事例を交えながら解説します。
帰宅願望が起きる理由を理解しよう
まず、利用者さんが帰宅願望を強く訴える理由を知ることが大切。
帰宅願望は、認知症の進行や心理的な不安、孤独感が原因となることが多いです。
特に夜間は、環境の変化や周囲の静けさが利用者さんに孤立感を与え、帰りたいという気持ちを引き起こしやすくなります。
また、家族との思い出や日常生活のリズムを思い出すことで、「ここではないどこかへ戻りたい」という感情が生まれることも。
利用者さんが感じる不安や孤独に耳を傾けることで、その根本的な理由に対応しやすくなります。
帰宅願望の背景にある感情を見逃さないようにしましょう。
帰宅願望への心理的なアプローチ
帰宅願望が強い利用者さんには、心理的なアプローチが有効です。
その一つが、「同調」と「共感」を強調した方法!
利用者さんが「家に帰りたい」と訴えた時に、「そうだね、家が恋しいよね」と共感することで、相手が「自分の気持ちを理解してもらえた」と感じ、少し安心することがあります。
さらに一歩進んで、「実は私も家に帰りたくなってきちゃった!」と、利用者さん以上に強い帰宅願望を演じてみるという方法もあります。
このアプローチは、自分の感情を相手よりも強調することで、利用者さんが一瞬冷静になる効果を期待できます。
心理学では、自分よりも感情を表に出している人を見ると、自然と落ち着くという現象が知られています。
この方法を試すことで、意外にも効果が得られることがあります。
帰宅願望が高まる時間帯に備える
帰宅願望が起きやすいのは、夕方から夜間にかけての時間帯です。
この時間帯は、認知症の方が混乱しやすくなる「夕暮れ症候群」とも関連しています。
施設内の環境を工夫し、できるだけ利用者さんが安心できる雰囲気を整えることが重要です。
たとえば、温かい飲み物を提供したり、リラックスできる音楽を流したりすることが効果的。
また、普段から利用者さんの生活リズムを整え、日中に適度な活動を取り入れることで、夜間の不安を軽減することもできます。
実際の対応例:帰宅願望を逆手に取る方法
具体的な対応として、自分が利用者さん以上に強い帰宅願望を訴える方法があります。
このアプローチでは、「私も家に帰りたくてたまらないの!でも、今日はここで頑張るしかないみたい…」というように、利用者さんと同じ気持ちを共有する演技を行います。
ある介護職員の経験では、この方法を試みたところ、利用者さんが「そんなに帰りたいの?まあ、落ち着きなよ」と逆に慰めてくれる展開になったそうです。
このように、相手の感情を逆手に取ることで、場の雰囲気を変えることができます。
ただし、この方法が効果を発揮するのは、利用者さんの感情が過度に高ぶっていない場合に限られます。
相手の反応を見極めながら、適切な対応を選びましょう。
利用者さんの安心感を高める具体的な工夫
帰宅願望を軽減するためには、日頃から利用者さんの安心感を高める取り組みが重要です。
例えば、利用者さんの部屋を自宅に近い雰囲気に整えたり、家族写真や思い出の品を飾ることで、自宅にいるような感覚を持ってもらうことができます。
さらに、利用者さんと日常的にコミュニケーションを取り、不安を軽減することも効果的です。
「今日はこんなことがありましたね」と一日の出来事を振り返ったり、「明日はこんな予定がありますよ」と未来の楽しみを共有することで、帰宅願望が和らぐことがあります。
帰宅願望を利用したポジティブな転換
帰宅願望を単に否定せず、「一緒に少し探してみましょうか」と提案することで、利用者さんの気持ちを受け入れながら、注意を他の方向に向ける方法も有効です。
ただし、探索がエスカレートして混乱を招くことのないよう、適度なタイミングで「今日はもう遅いから、明日また続きを探しましょうね」と切り上げることが大切です。
あるケースでは、「家に帰る前にちょっと一休みしましょう」とお茶や軽食を勧めることで、利用者さんが安心して落ち着くきっかけになったという報告もあります。
このように、帰宅願望を利用してポジティブな方向に話を持っていくことがポイントです。
帰宅願望へのアプローチで避けるべき行動
帰宅願望に対応する際には、いくつか避けるべき行動があります。
一つは、感情的になって利用者さんを否定することです。
「ここがあなたの家ですよ」と強く言い切ってしまうと、利用者さんはさらに混乱し、不穏な状態になる可能性があります。
また、安易に「一緒に帰りましょう」と提案するのも避けるべきです。
これにより、利用者さんが期待を抱き、さらに帰宅願望が強まることがあります。
代わりに、「一緒に考えましょうね」と寄り添いつつも、現実的な対応を心がけることが重要です。
チームでの対応と情報共有の重要性
帰宅願望に対する対応は、介護職員一人では限界があります。利用者さんの性格や傾向に応じた対応を行うためには、チーム内で情報を共有し、統一したアプローチを取ることが必要です。
たとえば、利用者さんが特定の時間帯に帰宅願望を訴えやすい場合、その時間に安心感を高めるケアを重点的に行う計画を立てることができます。
また、過去の対応事例を共有することで、新たなアイデアや効果的な方法が生まれることもあります。
まとめ 帰宅願望に対応するための心構え
利用者さんが帰宅願望を訴える場面は、介護職員にとって試練でもあります。
しかし、このような場面を乗り越えることで、利用者さんとの信頼関係が深まり、介護の質が向上します。
重要なのは、利用者さんの気持ちに寄り添い、焦らず冷静に対応することです。
また、介護職員自身も無理をせず、適切に相談やサポートを受けながら対応を行うことが大切。
一人で抱え込まず、周囲の協力を得てチーム全体で利用者さんの安心を支える姿勢を持ち続けましょう。
利用者さんの帰宅願望は、心理的な要因が絡む複雑な問題ですが、適切なアプローチを取ることで解決できるケースが多いです。
日々のケアの中で柔軟に対応方法を見直し、利用者さんが安心して過ごせる環境づくりに努めていきましょう。