一般的に「ホームヘルパー」や「ヘルパー」と呼ばれている訪問介護事業所の介護士ですが、実際はどのような仕事内容なのでしょうか?
ということで、今回は「訪問介護事業所で働く介護士の仕事内容」について解説していきます。
記事の前半では「訪問介護事業所で働く介護士の仕事内容と1日のスケジュール」を解説して、後半では「訪問介護事業所で役立つ資格と働くメリット・デメリット」をご紹介します。
訪問介護事業所の介護士の仕事内容は?
ヘルパーステーションと呼ばれることの多い訪問介護事業所ですが、具体的な仕事内容を知っている方は少ないかと思います。
訪問介護事業所で働く介護士の仕事は「身体介護」と「生活援助」の2つに分けることができます
それぞれどのような仕事内容なのか解説していきます。
身体介護
身体介護とは利用者さんに「直接触れて提供するサービス」のことです。
主な身体介護は次のとおりです。
・入浴介助
・排泄介助
・食事介助
・更衣介助
・移動介助
・移乗介助
・体位変換
ご覧のとおり、世間一般的にイメージしている介護士の仕事に近いイメージといった感じでしょうか。
上記の身体介護サービスを受ける利用者さんは、介護度が高く身体的な自立度が低い方が多い傾向があります
生活支援
生活援助とは利用者さんが「生活するために必要な日常生活支援」のことです。
訪問事業所で働く介護士が行う主な生活支援は次のとおりです。
・掃除
・洗濯
・買い物
・料理
・整理整頓
・デイサービスに出かける準備
先ほどの身体介護と比べると、こちらの方がホームヘルパーのイメージに近いかと思います。
上記の生活援助サービスを受ける利用者さんは、比較的身体的には元気だけどスーパーなどに1人で通うことが難しい方や、認知症により家事を行うことが困難な方が多い傾向があるといえるでしょう
訪問介護事業所で働くの介護士のスケジュール
ここからは、例として訪問介護事業所で働く介護士のスケジュールをご紹介します。
8時 出勤:当日の訪問先の情報の確認、準備
8時30分 Aさんの自宅に訪問:朝食と服薬の確認、出かける準備の介助、デイサービスへの送り出し
9時30分 Bさんの自宅に訪問:部屋の掃除、買い物の代行、昼食の調理
11時 Cさんの自宅に訪問:昼食の介助、排泄介助
12時15分 休憩:事業所に戻り昼食、休憩
13時45分 Dさんの自宅に訪問:洗濯、浴室の掃除、夕食の調理
15時 Eさんの自宅に訪問:入浴介助、更衣介助
16時30分 事業所に戻る:当日の介護記録を作成、同僚ヘルパーと情報共有
17時 退勤:翌日の訪問予定を確認して退勤
上記のように訪問介護事業所で働く介護士のスケジュールは、1日のなかで複数人の利用者さんの自宅へ訪問してさまざまなサービスを提供するのが大きな特徴です。
介護施設などで勤務していれば周りに同僚の介護士がいるので、分からないことや困ったことがあれば質問し解決することができますが、訪問介護事業所で働く介護士の場合はそれができません。
訪問介護事業所で働く介護士は、訪問先で起こった出来事に対応するスキルが求められるといえるでしょう
訪問介護事業所で役立つ資格とは
実は昨今の感染症流行による影響により、例外的に無資格者でも介護経験者であれば訪問介護事業所の介護士として働くことが認められています。
参考 厚生労働省 新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて(第4報)より
しかし、基本的には資格がなければ訪問介護事業所で介護士として働くことはできません。
この例外的措置がいつまで適用されるのかは分からず、安心して働くためにも資格を取得しておくことは必要だといえるでしょう
ということでここからは、訪問介護事業所で役立つ資格をご紹介していきます。
訪問介護事業所で介護士として働く際に役立つ資格は次のとおりです。
・介護職員初任者研修
・介護職員実務者研修
・介護福祉士
それぞれ、順番にご紹介していきます。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は介護の知識や経験がまったくない方でも、初歩的な介護の知識やスキルを学ぶことができる資格です
受講資格は特になく、介護未経験や無資格でも取得することができます。
また初任者研修は、キャリアアップする際に必要になる介護職員実務者研修の一部の講義が免除されることもあり、あまり費用や時間をかけずにすばやく資格を取得したい方に人気の資格となっています。
ここで少し補足ですが、上記の初任者研修のほかにも「生活援助従事者研修」という訪問介護の人材育成を目的とした研修があるのですが、こちらは比較的新しく作られた資格ということもあって取り扱っているスクールが少ないので、今回はあえて除外しています。
初任者研修と比べると短時間で修了できる研修なので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
介護職員実務者研修
介護職員実務者研修は将来的に介護福祉士資格取得や、訪問介護事業所でキャリアアップしたいと考える方向けの資格となります
こちらも初任者研修と同様に受講資格は特になく、介護未経験や無資格でも取得することができます。
取得するには一般的に「20科目、450時間」の研修を受ける必要があるため、ある程度学習の時間を確保できる方の受講をおすすめします。
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とはいえ介護職員実務者研修は介護福祉士を取得するために必要な資格なので、キャリアアップを目指す方には必須の資格だといえるでしょう。
介護福祉士
介護の仕事をしている方のなかでも、介護福祉士を目標にしている方も多いのではないでしょうか。
というのも、介護福祉士は介護職が取得できる唯一の国家資格だからです
介護福祉士を取得するには次の要件を満たす必要があります。
1.介護施設で3年間以上の実務経験
2.介護職員実務者研修を修了
3.介護福祉士国家試験に合格
つまり実務経験が3年以上あり、介護職員実務者研修を取得したうえで介護福祉士国家試験に合格する必要があります。
ですから「すぐに資格を取得したい!」といった方にはあまり向いていない資格ですが、取得できれば訪問介護事業所でサービス提供責任者になることができますし、資格手当が支給される事業所も多いのでぜひ取得したい資格だといえるでしょう。
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以上が訪問介護事業所で役立つ資格です。
ここまでで取得するべき資格が理解できたかと思います。
ここからは「こんなはずじゃなかったのに…」と後悔しないために、働く前に必ず知っておきたい「訪問介護事業所で働くメリット・デメリット」をご紹介していきます。
訪問介護事業所で働くメリット・デメリット
訪問介護事業所で働くメリットは「一人ひとりのニーズに合わせたサービスを提供できる」ことです。
基本的に訪問介護は、1人で利用者さんの自宅に訪問してサービスを提供します。
時間の制限こそありますが、入居施設などと比べて利用者さんが必要としていることに対応することができるといえます。
その反面、1人で訪問してサービスを提供するため、困った時などに頼れる人がその場にいないのがデメリットだともいえるでしょう。
こんな人は訪問介護事業所で働くのがオススメ!
訪問介護事業所の介護士の仕事の特徴はズバリ「1人で仕事をする時間が多い」ことです
。
そのため「利用者さんとじっくり向き合ってサービスを提供する」「移動時間があるので業務の間に気分転換をする」というのは、ほかの介護施設で実現するのは難しく訪問介護ならではの働き方だといえるでしょう。
一方で利用者さんの自宅に1人で訪問してサービスを提供するため、自己判断力が問われる職場でもあります。
つまり同僚の介護士に気を使いながら働きたくない方や、責任感を持って利用者さんと向き合いたい方は訪問介護事業所で働くのがオススメだといえます。
まとめ
今回は訪問介護事業所での介護士の仕事内容についてご紹介しました。
訪問介護はほかの介護施設と比べて1人で仕事をする時間が多いので「頼りになる人がその場にいない」「何かあれば自分1人で対応しなければいけない」といった、自己判断力を問われる場面が多いといえます。
その反面「目の前の利用者さんにじっくり向き合える」「一人ひとりのニーズに沿ったサービスを提供できる」のように、ほかの介護施設では実現することが難しい働き方ができる魅力的な職場だといえるでしょう。