介護施設で働く以上クレームは切っても切れない問題です。
普段から十分気をつけて支援していても、家族との意見相違、突発的な事故などからクレームにつながってしまうケースも見受けられます。今回は家族からクレームを受けた際、介護施設としてどう対処すべきなのか、実例を紹介しながら分かりやすく解説していきます。
介護施設にお勤めでクレームに悩まれている方、参考にしていただければ幸いです。
家族からのクレームは、どお対処すべき?
家族からのクレームでポイントとなるのは受け止めるべきクレームと理不尽なクレームを見極め、適切に対応することです
そもそも本来クレームとは、サービスに対する苦情や改善要求から、介護施設にとってサービスの行き届いていなかった点を改善し、利用者や家族とコミュニケーションを図ったり信頼関係を築く上で重要な指摘となります。
従って、根拠のある正当なクレームには真摯に対応することが重要となります。
一方、家族からのクレームを受ける際に気をつけなければならないのが“理不尽”なクレームです。
理不尽とは「物事の筋が通らないこと」を意味する言葉です。
理不尽なクレームには毅然とした態度で統一した対応をしなければなりません。
では、受け止めるべきクレームと理不尽なクレームはどう見分ければ良いのでしょうか?
さらに、それぞれのクレームはどのように対処すればよいのでしょうか。詳しくみていきましょう。
受け止めるべきクレームと理不尽なクレームの見極め方
介護施設において「受け止めるべきクレーム」と「理不尽なクレーム」を見極め方について紹介します。
クレームが発生すると感情的になってしまう事もありますが、後の事を考え慎重に見極めていきましょう
受け止めるべきクレームの見極め方
まず、「受け止めるべきクレーム」の見極め方について紹介します。
受け止めるべき家族からのクレームの1つの判断として、介護支援サービスが至らなかった部分や改善点を指摘しているかが挙げられます
例として、転倒で利用者が怪我をしてしまった場合を紹介します。
前提として事故につながる転倒などは発生しないよう十分注意すべきです。
しかし、介護においてヒューマンエラーは必ず起こるもので、時には転倒させてしまうことも考えられます。
このような場合は施設側に責任が生まれ、適切な対処をして、利用者はもちろんご家族にも対応経過や謝罪が必要になります。
その際に本人や家族がサービス体制を問題視し、クレームに発展する可能性があります。
このような正当な理由があるクレームは受け止めるべきクレームといえます。
提供しているサービス内容と照らし合わせ、何が不足してたのか、サービスの範囲内で適切に行われていたのかを見極めることが判断基準の1つになります。
理不尽なクレームの見極め方
対して理不尽なクレームは「内容」そのものが理不尽があったり「方法」が理不尽という特徴があります
理不尽な「内容」とはその内容自体が難しい要求を指します。
例を挙げると、提供サービス以上の要求、例えば
・1日に3回の入浴をどうしてもして欲しい
・栄養バランスを大きく超える食事を提供して欲しい
などは支援サービス外であったり、利用者の健康を考慮すると受け入れるのは難しいケースが多いです。
クレーム指摘者が、無理であることをすぐ納得する場合は良いですが、なかなか引き下がらず同様の要求が続くこともあり、長期化してしまうことがあります。
もう一方の理不尽な「内容」とは
・同様の説明をしているにも関わらず同じ質問を繰り返す
・長時間施設に居座り続けなかなか帰らない
・時間関係なく電話をかけてくる
などがあります。
たとえクレーム内容が真摯に受け止めるべき内容であっても、このような状態になってしまうと正常な介護施設サービスを提供することが困難になってしまいます。
さらに、対応する職員は精神的に追い込まれてしまうことも多く、特に配慮しなければいけないクレームになります。
受け止めるべきクレームの対処方法
つづいて、家族からのクレームの対処方法について紹介します。
受け止めるべきクレームの対処方法は本来介護施設が対応すべき方法といえます
社会福祉法82条においても“社会福祉事業の経営者は、常に、その提供する福祉サービスについて、利用者等からの苦情の適切な解決に努めなければならない。”と定められており、苦情を介護施設に伝えるのは利用者や家族の権利として認められています。
従って、適切な指摘や、不十分な支援の結果招いてしまったクレームは真摯に受け止め対応することが求められます。
介護施設を利用する際に、必ず「利用契約」を結んでいるはずなので、契約内容に沿ってどのようにクレーム対処していくのかがポイントになります。
注意したいのが根拠のない対応です。
根拠なく、「今回の場合はこうしよう」と安易に特別対応を決定してしまうと、同様のケースが起こった時にも特別対応をせざるを得なくなる可能性も考えられます。常に根拠に則った対応を心がけるようにしましょう。
もう1点気をつけたいのが、個人での対応を避けることです。
対応する際は介護施設としての方針を決め、施設として複数人で対応することが重要
個人での対応をしてしまうと個人責任が生まれるだけでなく、職員のモチベーションダウンにもつながってしまいます。
クレームを受けた場合は速やかに上司などの管理者に報告し対応を仰ぎましょう。
法人として一貫した対応を心がけ、解決の糸口を見つけましょう。
理不尽なクレームの対処方法
では、理不尽なクレームが発生した場合はどのように対応すればよいでしょうか。
対応時の録音など証拠を残しておく
家族からのクレーム関連でよくあるケースが「言った言わない」という問題
後で弁護士などの第三者に相談する際も、録音は客観的証拠になりえます。
対応する際は音声録音など客観的証拠を揃えられるようにしておきましょう。
複数人で対応する
受け止めるべきクレーム同様、こちらも個人で対応しないことも基本となります。
1人で対応した際、高圧的なクレーマーに屈してしまい出来ないことを容認してしまい、さらなるトラブルに発展してしまう可能性も考えられます。
対応者の意見を統一し、相手の意見を傾聴しながらも、施設としての意見を一貫して伝えていくことが求められます。
複数人いることで、聞き手役や意見を伝える役など役割が生まれ、意見交換がスムーズになることもあります
クレームを起こさないための対応策方法
最後に、家族からのクレームを発生させてないための対応方法を紹介します。
事前にサービス内容を十分説明する
サービス内容の説明はクレームを発生させない上で重要です
介護施設側はきちんと説明したつもりでも、意図が十分に伝わっておらず、相手に不安や不信感を与えてしまうことがあります。
このような説明不足、認識不足でクレームに発展してしまわないよう、特にサービスを初めて利用する方には十分な説明をしておくことが求められます。
そのため、重要事項を伝える場面では、口頭などを交えながらできる限り分かりやすく説明するよう心がけ、家族の理解と同意を得る工夫が必要です。
施設の様子を細かく伝える
意思伝達不足で家族からのクレームにつながってしまうこともあります
記録や申し送りの不備は、大きなトラブルに発展する恐れもあるため、職員間の連携体制をしっかりと確立しておきましょう。
利用後、体に傷があった際にハッキリ答えることができないと「転んだのか?もしかして職員がやったのか?」と不信感を抱いてしまいかねません。
このような職員間で情報が共有されずクレームにつながるケースは少なくありません。
利用者はもちろん、家族とは良好な関わりを日頃からつくっておき、施設での様子を積極的に伝えるようにしましょう。
まとめ
今記事では家族からのクレームで介護施設側はどう対処すべきなのかを紹介しました。
クレームという言葉は何かとネガティブなイメージが先行してしまいますが、本来は介護施設をより良くしいくために活かすことができます。
苦情を伝えた側と対応する施設側が互いに対応策を話し合うことで解決の道を模索することができ、より支援の質を高めることができます。
苦情対応は辛い場面も多くありますが、介護施設一丸となってクレームと向き合っていきましょう。