混合介護はいわゆる介護保険サービスと、それ以外のサービスを同時に利用する介護を差します。
従来の介護保険サービスだと、被介護者の食事をカバーすることはできても、被介護者の家族の分までカバーすることはできませんでした。
そこで、介護保険外のサービスも提供できるように、混合介護が規制緩和されることになったわけです。
これまでも混合介護は可能でしたが、保険内と保険外のサービスが同時に提供できない制限が存在します。
今回は混合介護のこれからについてお話していきたいと思います。
介護職が行う混合介護とは?
介護職の人が現行の規制で混合介護を提供するには、別のヘルパーが交代するか、ヘルパーが一度事業所に戻り手続きをして再び訪問する必要があります
その為、無駄が多く介護職や事業所の負担にもなることから、国はサービス提供に関する規制緩和を決めた形です。
規制緩和の実証実験は、東京都の豊島区を対象に行われました。
これにより豊島区では保険内と保険外のサービス提供が同時に可能になり、更には付加価値をつけた部分が料金を上乗せできるようにもなっています。
従来も洗濯や調理は介護保険内のサービスでしたが、今後は保険外の書類確認や分別、調理した料理を一緒に摂るといったことも可能になります。
介護保険外のサービスには被介護者以外の洗濯や調理、買い出しに被介護者の居室以外の掃除、家具や家電の移動や修理、模様替えなどがあてはまります。
日用品以外の買い物もこれまでは不可能でしたが、これからは介護職もできるようになります。
加えてWEBカメラによる見守り、趣味の行動の同行や大掃除、草むしりや草木の水やりにペットの世話などもあります。
電球や蛍光灯の交換も、今までは介護職以外の人が担当するか、介護保険サービスを提供する人とは別のヘルパーが必要でしたが、これらも1人でこなせるようになります。
一見メリットが多そうにも見えますが、新しい取り組みには課題も増えてきそうです。
介護士が混合介護を行うメリット・デメリット
介護士が混合介護を行っていく上でのメリットに期待できますが、やはりデメリットも存在します。
期待できるメリットと、デメリットになりつつある部分を考えてみましょう。
混合介護を行うメリット
混合介護には、利用者にとって利便性が向上したり、被介護者がヘルパーに頼めることが多くなるといったメリットがあります。
それから事業所間の競争が促進され、独自の付加価値をつけたサービスの提供といった可能性にも繋がります。
介護業界全体の質向上にも期待が集まりますから、混合介護は広範囲にわたってメリットをもたらすと考えられます
一方、介護職自身にも被介護者からの頼みごとを断らずに済んだり、介護保険サービスに加えて介護保険外のことも一緒にできるメリットが生じます。
これまでだと、お願いされて引受けたくても、規制によって断らざるを得ませんでした。
その点、混合介護の規制緩和によりできることが増えて、しかもひとまとめに引受けられるようになります。
被介護者からすれば、頼みごとがしやすくなったり、何でも気軽にお願いできることになるでしょう。
利便性の向上は介護職だけでなく、サービスを提供する事業所の評判の向上にもなるはずです。
当然ながら、今まで断ってきた保険外のサービスも提供できるようになることで、必然的に収益が増加することにもなります。
事業所の収益が上がれば介護職に還元される金額も増えますから、給料を始めとした待遇の改善が期待できます。
となれば人材を評価する仕組みが確立されたり、評価によるインセンティブが働き、結果的にサービスの質向上にもなるでしょう。
混合介護のデメリット
混合介護は必ずしも良いことばかりではなく、利用者の金銭的な負担が増えたり、サービス提供における線引が必要といったデメリットが発生します
経済的に余裕がないとサービスを利用できない、そういうイメージが強まれば不公平感が生まれますし、サービスを提供する側には対応の負担が増加する懸念があります。
少なくとも、現場で働く介護職の負担が増加することは避けられませんから、混合介護の新しいルールのもとで無理なく働けるように、しっかりと線引をすることが必要です。
具体的には介護保険対象のサービスとそれ以外を明確にしたり、保険外のサービスの利用料の設定、利用者の同意を求める文書の作成などを要します。
つまりこれらのルール作りの負担もまた、デメリットの1つだといえます。
新しい混合介護で介護職の働き方はどお変わる?
新しい混合介護では、介護職の業務が増えて仕事の量が増加しますが、その分収入も増えることになります。
拘束時間が増すので、そこは相応の収入増加がなければ仕事の量が増えたり負担が増しただけで、やりがいを感じることは難しくなるでしょう。
だからこそ事業所にはしっかりとしたルール作りであったり、待遇改善などを求めることが必要不可欠。
介護職の内でいわゆるケアマネージャーは、提供するサービスの増加や組み合わせの拡大によって、今後仕事の量が増えたり業務の内容が複雑化します。
より一層知識や経験が求められることになりますし、腕の良し悪しが見られたり評価に対する影響が強まります。
利用者が納得できて無理や負担が生じないケアプランを提案できるか、その実力がケアマネージャーに問われることになるでしょう。
従来の介護保険サービスは、内容が決まっていて提供できるサービスに制限があったことから、割と平等だったといえるでしょう。
しかし、これまでの介護保険サービスのルールが大きく変わり、保険外のサービスも提供できるようになるわけですから、経済格差がサービスに影響することになり得ます。
介護職にとっては、料金によってサービスの内容や質を変えざるを得なくなったり、費用に合わせて仕事にメリハリをつける必要が出てきます
異なる料金なのにサービス内容が同じ、あるいは差が小さければ利用者にとって不公平感が生じますから、この点を考えながら仕事をすることが求められるようになるでしょう。
勿論、明確な線引やルール作りをするのは事業所の役割ですし、事業所によって働きやすく感じたり、逆に働きにくくなることも予想されます。
このように新しい混合介護は事業所にも変化をもたらしますから、介護職にはより一層の事業所選びも必要になると思われます。
混合介護の規制緩和は、サービスの競争や質向上を促す為のものでもあり、利用者の満足度が評価に反映されることになります。
待遇や報酬は評価に基づき決まる性格が強まるので、質の高いサービスを考えて提供する必要性が高まるでしょう。
まとめ
介護職には混合介護にメリットはあるのか?についてお話していきました。
混合介護は介護保険サービスと、保険外のサービスを提供することで、従来も条件を満たせば提供自体は可能でした。
ただ無駄が多く手間が掛かることから、効率的とはいえずデメリットが多かったといえます。
国は現状を考えて規制緩和に乗り出し、東京都豊島区の実証実験を皮切りに拡大。
混合介護の規制緩和はサービス利用者の被介護者と、サービスを提供する介護職の双方にメリットをもたらします。
端的にいえばやってもらえること、やってあげられることが増えるので、お互いにとってメリットが感じられるようになるでしょう
保険適用外のサービスは当然ながら10割負担ですから、利用者には経済的な負担が避けられないのも現実です。
この点はデメリットの1つで、サービスの線引や料金設定が必要になることは、事業所にとっての負担やデメリットになります。
規制緩和は必ずしもメリットばかりではありませんが、しかし市場競争の促進やサービスの質向上、介護職の待遇改善などのメリットに期待が掛かりますね。