介護職の現場は、肉体的・精神的な負担が大きい仕事です。
多くの人が介護士として働き始めても、何らかの理由で早期に離職してしまうことがあります。
その中でも、「スルースキル」の欠如は、辞めてしまう人の共通点です。
今回は、私自身の経験とともに、スルースキルとは何か、その重要性、そしてスキルを高める方法を詳しく説明します。
スルースキルとは?介護現場での必要性
まず、スルースキルとは、日々の業務で発生するストレスや困難な状況を重く受け止めずに受け流す力。
このスキルがなければ、ストレスが積み重なり、疲労感や心身の疲弊につながります。
介護の仕事は、利用者だけでなく、同僚や家族とも密接に関わります。
このような多様な関係性があるため、予期せぬトラブルや厳しい言葉にどう対応するかが仕事を続ける上で非常に重要です。
たとえば、ある利用者から「話を聞いてくれない」と叱られた経験が何度かありました。
そのとき、私はその言葉を真に受けて「自分は仕事ができていない」と感じ、仕事後に自己反省会のようなものをしいた事もありました。
そんなとき、スルースキルを意識的に持つことで、「すべて自分のせいではない」と割り切り、気持ちを切り替えられるようになりました。
スルースキルが低い人が辞めてしまう理由
スルースキルが低いと、仕事中に生じるストレスや心の負担が、徐々に精神を消耗させていきます。
介護士は、利用者のために真心を持って仕事をすることが求められますが、時にはその努力が報われないこともあります。
感謝されるどころか、批判的な言葉を浴びせられることもあるでしょう。
こうした状況に対して、全てを真剣に受け止めてしまうと、心の持ちようが揺らぎ、最終的には仕事を続けられなくなります。
私が経験した最も辛い出来事の一つは、長く担当していた利用者の家族から「もっと丁寧にケアしてほしい」と言われたときでした。
自分なりに最大限の努力をしていたつもりだったので、その言葉はとても刺さりました。
数日間は「私はこの仕事に向いていないのかもしれない」と悩みましたが、その後、「全てに応えるのは無理だ」と自分に言い聞かせ、スルースキルを使って心を軽くする方法を試みました。
スルースキルを高めるための3つの具体的な方法
それでは、スルースキルを高めるために私が意識してきた方法を3つ、具体的に紹介します。
目の前の仕事に全集中すること
スルースキルが低いと、頭の中で嫌な出来事を何度も思い返してしまいます。
このようなとき、意識的に「今この瞬間」に集中することが大切です。
例えば、移乗介助や食事介助に専念し、その手順や利用者の表情に気を配ると、自然と心が過去の嫌な出来事から離れます。
マインドフルネスという概念を取り入れることで、目の前の仕事に集中することができます。
息を整え、一つひとつの動作に意識を向けると、嫌なことを考える余裕が減り、仕事そのものに集中できます。
職場の関係をビジネスパートナーとして割り切る
介護の職場には多種多様な性格の人々が集まります。
全員と仲良くすることは現実的に不可能ですし、その必要もありません。
そこで、職場での人間関係を「ビジネスパートナー」として捉えることが役立ちます。
友人関係とは異なり、必要以上に気を遣う必要がなくなり、過度に他人の意見や言葉を気にせずに済むようになります。
あるとき、同僚が何気ない一言を投げかけてきました。「もっと早く動けないの?」その瞬間はカチンと来ましたが、「この人の意見は単なるアドバイスだ」と割り切るよう心がけました。
距離感を保つことで、不必要なストレスを避けられるようになりました。
「仕事はいつでも辞められる」と思う余裕を持つ
仕事を続ける中で、「無理しすぎない」という心の余裕も必要です。
「どうしても無理なら辞めればいい」という気持ちがあるだけで、驚くほど気持ちが楽になります。
この考えは、心のリセットボタンのような役割を果たし、ストレスを一時的に解放します。
ある日、私は体調不良で仕事中にミスをしてしまいました。
上司に厳しく指摘され、「もう限界かもしれない」と思いました。
しかし、「本当に無理なら別の仕事を探せばいい」と考えることで、その後の仕事が少し楽に感じることができるようになりました。
スルースキルが高すぎるとどうなるか?
スルースキルが高すぎると、逆に周囲から「冷たい」「無関心」と見なされることがあります。
すべてをスルーしすぎると、職場の協調性や信頼関係を損なう恐れもあります。
私は一時期、あまりにもスルースキルに頼りすぎて、同僚から「もう少し真剣に考えてほしい」と注意を受けたことがあります。
介護の仕事はチームワークが重要で、スルースキルを使いすぎると、他のスタッフとの間に溝が生まれる可能性があるので注意しましょう。
スルースキルをバランスよく活用する方法
スルースキルは便利なツールですが、バランスを保つことが大切です。
周囲との協力が必要な場面では、相手の意見をしっかり受け止めつつ、自分自身を守るためのスルースキルを活用しましょう。
例えば、同僚が困っているときにはサポートを惜しまず、一方で、自分への批判が過度になった場合はスルースキルを使って受け流す。
このように、シチュエーションによって使い分けることで、周囲との調和を保ちつつ、自分の精神的な負担を減らすことができます。
まとめ
介護士として仕事を長く続けるためには、スルースキルが欠かせません。
しかし、すべてをスルーしてしまうのではなく、適度に活用しつつ、人とのコミュニケーションも大事にしましょう。
スルースキルは、心の健康を守りつつ、自分自身の成長を促すための大切なスキルです。
周囲の期待に応えながらも、自分の心の余裕を確保することで、介護の仕事を楽しく続けられるようにしていきましょう。
このスキルを身につけ、実践することで、より長く笑顔で仕事を続けられることを心から願っています。