勤続10年の介護福祉士に、月額8万円の賃金改善という内容で話題になった特定処遇改善加算ですが、実際に給料が月に8万円上がった介護福祉士は少ないのではないでしょうか?
この記事の前半では、実際に勤続10年以上の介護福祉士が特定処遇改善加算の恩恵をどれくらい受けられているのかを解説していきます。
また記事の後半では、今後賃金が加算されたい介護福祉士の方が参考にできる、今からでも間に合う対策をご紹介します。
それでは、さっそく本文に進んでいきましょう。
介護福祉士が勤続年数10年でも賃金が加算されない現実
結論からいうと、勤続10年以上の介護福祉士でも月額8万円の賃金改善どころか、ほとんど給料が上がっていないというのが現状
なぜなら、2019年10月より特定処遇改善加算の算定が可能になりましたが、国が予想していたほど各事業所が算定に至っていないケースが多かったことが原因のようです。
以下の画像を見てください。
参考 厚生労働省 令和3年度介護報酬改定に向けて 資料41より
実際に、特定処遇改善加算が導入された2019年10月の各事業所の算定率は53.8%と約半分の事業所しか算定しておらず、5ヶ月後の2020年3月の算定率でも59.4%とかなり伸び悩んでいるのが状況です。
そして特定処遇改善加算を算定する際に、多くの事業所が月額8万円の賃金改善となる職員の設定、介護職員とその他の職員への分配方法が難しいといった声も実際に上がっています。
また算定要件の複雑さも、算定率が伸び悩んでいる大きな原因の一つだと感じます。
参考 厚生労働省 令和3年度介護報酬改定に向けて 資料40より
上記画像のとおり、主な加算要件が3項目ある上にそのなかでさらに項目が分かれていたりと、見た目以上に複雑な内容となっているのです。
このことから、今後も特定処遇改善加算の算定率は伸び悩んでいくことが予想されます。
とはいえ、今後介護人材が不足していくのは明らかなので、国としても介護人材を確保するために介護福祉士の賃金改善に対する取り組みを進めていくしかないのが現状です。
実際に、2021年度の介護報酬改定では処遇改善加算の職場環境等要件の見直しや、特定処遇改善加算の見直しが行われています。
今回の見直し内容次第では、各事業所の特定処遇改善加算の算定率が加速していく可能性もあるので、今後の介護報酬改定の情報には注目しておいたほうがいいですね。
特定処遇改善加算で賃金アップ!?
確かに特定処遇改善加算により介護福祉士の賃金は改善している傾向ですが、本来の月額8万円には届いていないのが現状
そもそもの原因として、算定要件が複雑かつ事業所への負担が大きいことから、結果的に特定処遇改善加算を算定しない事業所が多くなっているのが問題なのです。
特定処遇改善加算を算定しない事業所が多いということは、賃金の改善が見込めない介護福祉士も多くなる事になります。
実際に、2019年に実施された独立行政法人福祉医療機構の「介護職員等特定処遇加算に関するアンケート結果」によると、勤続10年以上の介護福祉士の1ヶ月あたりの賃金改善額は、平均21,700円という結果が出ています。
そして、8万円以上の賃金改善が実現している平均人数は、法人あたり1人を下回っているという結果も出ているのです。
このことから、勤続10年以上の介護福祉士の賃金改善額が本来の月額8万円には遠く及んでいないというのが現状だと言えるでしょう。
しかし先ほども述べたとおり、今後の特定処遇改善加算の見直し内容次第では月額8万円の賃金改善のハードルが下がる可能性がありますので、賃金を改善したいのなら今からでも遅くないので対策しておくことをオススメします。
参考 独立行政法人福祉医療機構「介護職員等特定処遇加算に関するアンケート結果」より
勤続年数10年で賃金が加算されるには?
実はこの特定処遇改善加算には国が示している基本的な条件があるのですが、実際には各事業所の判断である程度柔軟に条件を設定できるのです♪
逆に言うと、各事業所が設定した条件に適合することさえできれば、月額8万円の賃金改善の対象になれる可能性が大いにあるということなのです。
賃金が加算されるには以下の3つを意識すれば、賃金改善の対象になれる可能性が出てきます。
1.介護福祉士であること
2.ある程度の勤続年数
3.リーダー級の人材
順に解説します。
介護福祉士であること
当たり前ですが、勤続年数が10年以上で事業所で1番の優秀な人材であっても、介護福祉士でなければ賃金改善の対象になることはできません。
今後は介護福祉士を所持していることがスタンダートな時代になっていくことは間違いないので、早めに介護福祉士資格を取得しておくことをオススメします。
必ずしも10年必要ではない!?
意外と知らない方が多いのですが、事業所がリーダー格で十分なスキルと経験がある介護福祉士と判断した場合、必ずしも勤続10年以上の条件が必要ではありません
勤続10年以上の条件はあくまでも目安なので、勤続8年でフロアリーダーの介護福祉士みたいな方なら、賃金改善の対象になる可能性は十分にあるといえるでしょう。
とはいっても、どれだけ優秀な人材でも勤続1年目とかだと対象に入るのは難しいので、ある程度の勤続年数が必要になってきます。
なので、もし転職を考えている方は少し注意が必要だといえます。
リーダー級の人材
最終的に誰の賃金を改善するかを決めるのは、もちろん事業所の判断になります。
ということは、事業所の考え方としては「この人は優秀だから、今後もうちの事業所で働き続けてほしい!」と思っている人材の賃金を上げるのは、わりと自然なことですよね。
なので、普通の介護職員として働いている方が月額8万円の処遇改善の対象になるのは、かなり難しいといえます。
逆にいうと、介護主任やユニットリーダーといった役職についている介護福祉士の方であれば、誰にでもチャンスはあるのです
管理者や生活相談員を目指すのは現実的に大変ですが、介護主任やユニットリーダーであれば比較的狙いやすいポジションなのではないでしょうか?
ですから、日頃から積極的に業務に取り組んで、事業所からの信頼を積み上げておきましょう。
まとめ
今回は、勤続10年以上の介護福祉士が特定処遇改善加算による賃金改善の状況と、これから賃金の加算を受けるための対策を解説しました。
現状では勤続10年以上の介護福祉士への月8万円の賃金改善は難しい状況ですが、2021年度の介護報酬改定では特定処遇改善加算の見直しが行われる見込みなので、今後の賃金改善が十分に期待できます♪
また、月額8万円の賃金改善の対象になるためには介護福祉士というのが大前提ですが、事業所から優秀な人材と判断されることが重要だということも理解して頂けたかと思います。
日頃からたくさんのことを意識しつつ、月額8万円の賃金改善の対象になれるように業務に取り組んでみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。