介護現場は深刻な人手不足や、低賃金といったように常に過酷な環境にあるといえます。
超高齢化の日本において、介護業界のテコ入れは喫緊の課題であり、政府も賃上げなどの対応を試みてるものの十分でないのが実情です。
今記事では、政府の賃上げ一桁足りない、介護現場を知らず舐められてしまっていると感じる原因から、少しでも収入を増やす方法を紹介します。
介護業界の給料はこんなにも低い!原因は?
最初に介護業界の給料事情について見ていきましょう。
厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員の平均給与(手当や賞与を含む)は月315,850円です。これを年収に換算すると約380万円になります。
参考:厚生労働省HP:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/20/dl/r02gaiyou.pdf
日本全体の平均年収467万円なので、全国的に見ると介護職員の平均年収はまだまだ低い位置にあるといえます。
では、そもそもなぜ介護職員の給料は低く、なかなか満足できる賃上げに至らないのでしょうか。介護職員の給料が低い理由を探ってみましょう。
専門性が重要視されない
介護職は専門性を低く見られてしまい、なかなか給料アップにつながらない傾向にあります
「介護職は誰でもなれる」という印象から、スキルや知識を必要としない職業と思われてしまいがちです。
実際に、資格を持っていなければ働けないという業務は少なくい分、入り口は広いといえます。
入り口が広く専門性が低い分、医師や弁護士のように資格が無くては専門の業務をおこなうことができない職業に比べて給料が少なく、他業界と比較すると給料が安くなってしまう傾向にあるのです。
いくつか介護資格はあるものの、無資格者と有資格者の見分けは難しく結果的に「誰でもできる仕事」として認識されてしまいがちです。
その結果、専門性の判断が難しくなってしまい、十分な賃上げに至らないことが原因の1つになっていると考えられます。
仕事内容に対して賃金が低い
介護の重い責任に対し、十分な給料がもらえないと感じるのも給料が低い原因の1つといえます
介護の仕事は誰でもなれる仕事ですが「誰でも続けられる」仕事ではありません。
それだけ大変で常にプレッシャーやストレスを感じながら従事することになります。
1つのミスで利用者の命に関わることや重大な事故、さらには閉鎖的な人間環境などに対応していかねばなりません。
令和2年度介護労働安定センター「介護労働実態調査」結果の概要によると、介護職の労働条件・仕事の負担に関する悩みとして最も多いのが「人手が少ない」、次いで「仕事の内容のわりに賃金が低い」という結果が出ています。
10. 労働者の労働条件・仕事の負担に関する悩みは、賃金よりも人手不足(労働者調査)
労働者の労働条件・仕事の負担に関する悩み等において、前年より改善されているものの「人手が足りない」が 52.0%(55.7%)で最も高く、次いで「仕事内容のわりに賃金が低い」が38.6%(39.8%)で、労働者の悩みは賃金よりも人手不足が大きく上回っている。
参考:令和2年度 介護労働実態調査結果についてより
このように過酷な仕事内容に対して、給料が低いと感じている方が多い傾向にあることが分かります。
介護報酬に上限がある
最後は制度的な原因になります。
介護施設の多くは介護報酬を受け取り運営が成り立っていますが、その介護報酬には上限が設けられています
福祉施設の収入が決まっている以上、なかなか介護職員の給料を上げるのは厳しいというのが実情です。
介護報酬は「要介護状態」の段階によってサービス内容と介護報酬が決まっており、職場運営だけでは満足な給料アップが見込めない仕組みになっているのです。
職員が増えると現場は助かるものの、その分法人の人件費が発生してしまうというケースも少なくないのです。
現行の賃上げ制度とは
では、このような状況の介護業界に政府はどのような対策をうっているのでしょうか。
介護に対する賃上げ対策として、処遇改善加算と特定処遇改善加算というものがあります。
名称が似ていて分かりにくいですが、これによって介護職員の給料が底上げされており、介護に従事される方は知っておいて損はありません。
処遇改善加算と特定処遇改善加算についてみていきましょう。
処遇改善加算とは
処遇改善加算は、介護職員の賃金向上を目的に、介護報酬を加算して支給する制度です
2011年まで実施されていた介護職員処遇改善交付金を引き継ぐ形で、2012年に運用が開始されました。
加算を取得した事業所は、加算額に相当する賃金改善を実施しなければなりません。
・職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系を整備すること。
・資質向上のための計画を策定し、研修の実施または研修の機会を設けること。
・経験もしくは資格などに応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること。
・賃金改善以外の処遇改善の取り組みを実施すること。
上記の取り組みをしている認められた事業所には処遇改善加算が認められ、介護職員の賃上げにつながっています。
介護職員処遇改善加算とは、介護職員の給料を少しでも上げるための制度です。 厚生労働省の発表では、介護人材の需要は今後も増えていくことが予想されており、将来的に不足していく介護職員への対応策の1つとして始まり …
特定処遇改善加算とは
特定処遇改善加算は、2019年10月から施行された比較的新しい制度で、いわゆるベテラン介護職員の処遇改善を目的に、介護報酬をさらに加算して支給されます
勤続年数10年以上の介護福祉士に月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを目的としており、長く働くほど給料が上がっていく加算になっています。
離職率が高い介護業界、長く続けようと考えている方は注目したい制度です。
このような取り組みが日本ではなされていますが、「加算がもう一桁足りない…」と感じている方も少なくないでしょう。
将来は大丈夫?今後の介護職の賃上げについて
近年の政治の動きで、介護職の賃上げについて話題に出ているので紹介します
2021年に発足した岸田内閣の政権の1つに掲げられているのが、介護職らの賃上げです。
仮に補正予算が成立すれば、早くて2022年2月から介護職や保育士が月額九千円ほどの賃上げが行なわれます。
まだこの記事を書いている時点(2021年12月)では決定したわけではないですが、岸田政権の介護業界への取り組みについては注目していくことをおすすめします。
政府は来年2~9月に収入を3%程度(月額9000円)引き上げ、継続的に引き上げ効果が得られるよう「公的価格評価検討委員会」で議論し、年内に方向性を示す流れになっている。
人手不足に悩む介護、福祉現場はこうした給与改善の方針を歓迎する。しかし、まだ具体的な支給方法が分かっていないため、手放しで喜べない。
参考:ヤフーニュースより
個人の力で給料を増やす方法
政府が動き出すまで待つしか無いのか、というとそういう訳ではありません。
給料を増やすために今からでも個人で行動を起こすことは可能です。
個人でも可能な賃上げ、つまり給料がアップさせる方法を3つ紹介します。
夜勤のある職場に就く
夜勤勤務はほとんどのところで「夜勤手当」というものがあり、給料がその分上乗せされます。
一概にはいえないものの、夜勤手当は5,000から8,000円ほどの支給は期待できるので、仮に週に1回・月に4回夜勤に従事すれば20,000円から32,000円アップすることになります。
・介護未経験だけどできるだけ給料が高いところがいい
・体力には自信がある
といった方は夜勤の回数を増やしたり、夜勤専門の職員として働くことで日中のみで働く場合に比べ給料アップが期待できます。
役職・管理職になる
役職や管理職になることでも給料アップが期待できます。
役職を与えられることで業務を任せられる範囲が広がる分、給料に反映されます。
どれくらい賃上げされるかはどの役職に就くか、施設の給与形態によって大きく変わるので一概にはいえません。
既に介護施設で働いている方は、役職を手に入れることでどれくらい役職手当を受け取ることができるのか給与規定などで調べてみましょう。
介護施設は離職率が高い業界でもあり、上司が辞めたタイミングなど出世できるタイミングは多くあります
「出世すると責任が増えて嫌だ」と感じるかもしれませんが、その分の給料などの見返りは大きく、目指してみる価値は十分にあります。
転職を検討する
・夜勤がそもそもない
・なかなか評価してもらえない
・出世しても大きな給料アップは期待できない
上記のような場合は、転職を視野に入れることをおすすめします。
賃上げは、職場の方針や考え方によって大きく変わります。
支援を評価する際、はっきりと数字で分からない部分も多く、仕事に対する努力に対して正当な評価をするのは難しい一面もあります。
もっと自分を評価してもらえるところや、評価基準がしっかりと整備されているところであればスキルややる気によって給料が上がる可能性があります。
現在では、介護に特化した転職サービスが数多くあります。
自分にぴったりな職場を見つけるためにも、どのような求人や介護転職サービスがあるのか調べてみましょう。
まとめ
政府の賃上げ一桁足りない、介護現場を知らず舐められてしまっていると感じる原因と少しでも早く給料をアップさせる方法などを紹介しました。
政府も、介護の厳しい状況は理解しているものの、十分な政策が行き届いていないのが現状です。
人の命を預かる責任ある立場にある介護職員、給料面はもちろんですが人間関係などの職場環境といった改善も働くうえで重要なポイントになります。
働きに見合った給料を受け取れる環境になることを政府に期待しつつ、自分にできることを見つけ動き出してみてはいかがでしょうか。