介護医療院という高齢者介護施設をご存知でしょうか。
2018年に新設された施設で、厚生労働省の資料(※)では令和3年9月時点ですでに619ヶ所と、わずか4年間で急速に広がりつつあり、介護職の活躍の場でもあります。
参考 厚生労働省より
今記事では、介護医療院での介護職の働き方や特徴、メリット・デメリットについて紹介します。
介護医療院での介護職の働き方は?
介護医療院とは、高齢者の要介護者が医療と日常生活の介護を一体的に受けられる長期療養を提供を目的とした施設です
2018年4月にできたばかりの比較的新しい介護施設といえます。
それまでは「介護療養型病床」と「医療療養病床」の2つの病床に分かれていましたが、両者の良い部分を取り入れて創られるかたちで日本で広がりをみせています。
医療設備が充実し多職種と連携して働ける
そんな新しい介護医療院で介護職としての働き方は、医療などの多種職と連携して支援に当たるという点です
現在介護職で働いている方の中には「もっと身近に医療的なケアができたらいいのに」と感じたことはありませんか?
これまでの介護というと「老人ホーム」「デイサービス」のように食事介護や入浴介助といった日常生活に関わる支援がスタンダードでした。
介護医療院では、医療に関することは医療関係者が、日常で支援が必要な場面では介護職が利用者を支えることになります。
介護職として働く場合は、多種職を協力しながらより介護に注力することができるようになります。
介護職にとって医療の専門家が常に身近にいることは心強いです。
介護医療院は、医療など多種職と連携して利用者に合った支援をおこなう施設なのです。
介護医療院で働く時の大きな特徴
それでは、介護医療院の代表的な特徴についてみていきましょう。
介護職目線での特徴を説明していきます。
介護職だけでなく多職種と働く機会が多い
一番の特徴といえるのが、多種職との連携です
介護医療院では、介護で携わる範囲のみならず、医療が求められる部分では医療関係者が、リハビリが必要な方にはリハビリ専門の方が担当することになります。
したがって、利用者の様子の変化を見ながら、医療従事者やリハビリ職員といった多くの立場の人と関わる機会が多くなります。
比較的新しい形態の施設
前述していますが、介護医療院は2018年にできた新しい形態であり、本制度ができるまで紆余曲折ありました。
2000年に介護保険制度がスタートし、新しく「介護療養型医療施設」が創設され、翌年には療養型病床群が「療養病床」に再編されます。
この療養病床は「医療療養病床」と「介護療養病床」の2つに分けられたものの、ほとんど差ができず課題として残ってしまいました。
そこで政府は「医療は医療機関で、介護は介護施設で」と区分する方針が打ち出され、介護療養病床は廃止する方向性になったものの、こちらもうまくいきませんでした。
介護療養病床の次の受け皿として、2018年に新しく創設されたのが介護医療院です
高齢者施設の新しいかたちとして、介護医療院は今後も増えていくことが予想されます。
利用者にとっても
・病院のような医療機関はちょっと
・医療的なケアが必要で老人ホームだと心配
という、これまでなかなか自分に合った施設が見つからなかった人でも候補の1つになる可能性があります。
医療的ケアができ最期まで関われる
長期療養に対応しているのも介護医療院の特徴です
もし入居している方の症状が重症化しても受け入れ先を探すといった時間的なロスがなくなり、同じ施設で最期まで必要な介護・医療ケアを提供することが可能になります。
介護施設では「利用者の様態が急変しても、なかなか受け入れてくれる医療機関が見つからない」というケースが少なくありません。その点、介護医療院は安心して支援に携わることができるといえます。
介護職が介護医療院で働くデメリット
そんな比較的新しい介護医療院ですが、介護職として働く際にはどのようなデメリットがあるでしょうか。
多種職とのコミュニケーションが求められる
介護医療院は、多種職が連携して支援や医療といった包括的なケアをすることになる性質上、相応のコミュニケーション能力は不可欠です。
コミュニケーションが苦手という方は苦労する場面が多いでしょう
介護、医療、リハビリ、運営など立場によって意見や対立が起こってしまうこともあります。
もちろん利用者のため最善の方法は何かを考えてのことですが、方針や支援方法などをまとめるのに苦労する場合も。
また、「報告・連絡・相談=ほうれんそう」もより重要になってきます。
利用者の様子を日々観察し、変化があれば関係者へ伝えるといった連携が求められ、重荷に感じてしまう可能性があります。
体力的につらい場合も
介護医療院は、要介護高齢者を対象としているため、身体的な介助が多くなります。
支援する中で必然的に体を動かす機会が多くなり、体力的に消耗してしまい辛いと感じる場合があります
ベッドや車椅子の移乗など体を必要とする場面が多くあり、体力に自信がない方は最初のうちは苦労するかもしれません。
一方で、仕事をしながら体を動かすことができ、良い運動の機会と捉えることもできます。
勤務時間が安定せず生活リズムが乱れる
平日の日中だけではなく、勤務時間がバラバラになってしまうため生活リズムが安定しない部分も注意が必要です。
介護医療院は24時間利用者を支援することになり、必然的に夜勤などの変則勤務に従事することになります
・子育てをしていてどうしても夜勤ができない
・変則的な勤務は体調を崩しやすい
といった方は厳しい環境になってしまう可能性があります。
夜勤などの勤務が厳しい場合は、働き方を配慮していくれる介護医療院を探すのも方法の1つです。
人手不足だから、日中だけでも働いてほしいという施設がある可能性も十分考えられます。
介護医療院で働くメリットとは?
デメリットばかりをお話してきましたが、もちろんメリットもあります。
では、介護医療院で働く魅力はどのようなことが挙げられるでしょうか。
包括的なケアができる
介護医療院は、介護・医療・リハビリなど高齢者が必要としている介護サービスを備えており、他の施設に比べ利用者に向き合った支援ができます。
長期療養に生活施設でもあるため、長い期間じっくり向き合いながら支援することができというメリットがあります。
ひとりの人生に寄り添った支援がしたいという方はおすすめできる環境ですね
身近に医療関係者がいる
身近に相談できる医療関係者がいることも魅力の1つです。
高齢者介護をしていくうえで、医療に関連することは切っても切れません。
命に関わる重要な判断が求められる支援において、近くに医療に精通した人がいるのは非常に心強いです
普段から連携して関わっていくことで、支援や治療方法などの検討もやりやすくなります。
介護以外の経験を積める
もう1つ欠かすことのできないメリットが、さまざまな経験を積むことができるという点です。
介護医療院の入居者の多くは、要介護4~5の高齢者と、要介護度の高い方が対象となっています。
そのため他の施設に比べると、身体介護など介護に関する知識はもちろん、医療ケアを間近に見る機会も多くなります。
看取りといったつらい場面にも立ち会うかもしれませんが、その分介護職としてさまざまな経験を積む働き方ができます
まとめ
介護医療院での介護職の働き方や特徴、メリット・デメリットについて紹介しました。
介護医療院は、高齢者介護の変化にともない生まれた新しい施設で、需要はこれからますます高くなっていくことが予測されます。
介護職として働く場合においても、多くの立場の人と関わりながら働くことができ貴重な経験ができる職場のようです。
また、医療などの専門家がいる分、介護職としてより支援に集中できる働き方といえます。
他の専門知識を増やしていきたい場合は、介護医療院への転職も考えてみてもいいかもしれません。
介護職として新しい働き方を探している方、介護医療院を選択肢の1つに加えてみてはいかがでしょうか。