ネグレクトという言葉は、介護支援に従事する方ならほとんどの方が耳にしたことがあると思います。
虐待の1つであるネグレクトが世間でも知られるようになり様々な法律が考えられ施行されてきました。
この記事では、介護施設で発生してしまうネグレクトについてわかりやすく紹介します。
ネグレクトの概要や、介護施設でどのように注意すればいいのか知りたいという方はぜひ最後までご覧ください。
そもそもネグレクトとは
厚生労働省のHPではネグレクトを以下のように説明しています
幼児・高齢者などの社会的弱者に対し、その保護・養育義務を果たさず放任する行為のこと。
最近は、本人自身の基本ニーズ(衛生面、服飾面、食事など)を顧みない行為について、セルフ・ネグレクトと称することもある。
ネグレクトは高齢者虐待防止法 、児童虐待防止法、障害者虐待防止法と、虐待を防止するために定められた法律で分類されている虐待の1つです。
高齢者のネグレクトの虐待件数を例に上げると、令和元年度の厚生労働省の調査では”養介護施設従事者等による虐待において特定された被虐待高齢者 1,060 人のうち、介護等放棄(ネグレクト)は212 人(20.0%)”とのデータが出ており、虐待の内5人に1人がネグレクトの被害に遭っていることになります。
参考:令和元年度の「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果 」より
介護施設で発生してしまうネグレクトとは
それでは、介護施設で発生してしまうネグレクトとはどのようなものがあるのか見ていきましょう
ネグレクトの具体例
・長期間入浴しておらず、体が臭っている状態
・水分や食事を与えず脱水症状、栄養失調、長時間の空腹状態になっている
・劣悪な住環境のなかで生活させている
・必要な介護、医療サービスを制限、利用させない
・オムツ交換をせず、同じものを使い続ける
・褥瘡(床ずれ)ができるなど、体位調整や栄養管理を怠っている状態
このように、異臭がする、脱水や栄養失調になっている、適切な支援を提供せず放置するといった行為はネグレクトに該当しまします。
介護施設で十分注意しなければいけない虐待の1つです。
ネグレクトが発生しないために
それでは、ネグレクトを発生させないためにはどのような方法があるでしょうか。
対応策を4つ紹介します。
倫理観とコンプライアンスを厳守する
ネグレクトを発生させない前提として、「利用者一人ひとりの尊厳の保持する」という支援に携わる職員としての使命を肝に銘じる必要があります
しかしながら、日々の支援業務をするうち、 倫理観やコンプライアンスの意識が薄れてしまい、ネグレクトにつながってしまうケースもあります。
働きはじめたばかりのころは志や意欲が強かった職員も、何年も勤務するうちに業務の慣れや、利用者のとの付き合いが崩れてしまい、ネグレクトにつながってしまうというケースも少なくありません。
このような意識不足が原因の対応策は
定期的な虐待に関する研修
倫理観の共有
コンプライアンスの共有
を図ることが重要です。
介護施設に従事する方は、常に虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、利用者の尊厳を常に考え、意識した支援をおこなうよう心がけましょう。
職場全体でアプローチする
ネグレクトに対し「職場全体」で考え、向き合いながらアプローチしていくのも大切な要素です
職員間で意思疎通が思うようにいかず、個人で支援をするのが当たり前になっていると非常に危険です。
個人の判断で支援に関する判断をしてしまい、結果的にネグレクトにつながってしまうケースもあります。
対応策として
ことが求められます。
この対策は、虐待を未然に防ぐだけでなく、業務の効率化にもつながります。
個人プレーで支援をするのではなく、常に職場全体でどのようにアプローチしているくのか考え、実行していくことが大切です。
介護支援負担・ストレス軽減する
介護施設の業務負担や、職員が抱えているストレスもネグレクトの原因になることがあります
介護業界は慢性的に人手不足なので、施設によっては職員一人ひとりの業務量が許容量を超えてしまい、その結果大きなストレスにつながってしまう場合もあります。
また、プライベートで起こったストレスも仕事に大きな影響を与えてしまうことがあります。
対応策として
柔軟な人員配置の検討
効率的な作業の見直し
柔軟な人員配置の検討
などのように、 余裕を持った支援ができるよう日々の業務軽減の見直しをおこなうことが大切です。
定期的に必要な業務、不必要な業務を洗い出し、 働きやすい環境をつくれるよう心がけましょう。
良好な職場風土をつくる
ネグレクトが発生してしまう原因として、「職場風土」も可能性として挙げられます
普段からネグレクトに該当する支援や対応が当たり前になっていると、当たり前になり、いつしか施設全体に広がってしまいます。
「周りもやっているから自分もやってしまおう」と利用者の尊厳を傷つける行動が日常的になってしまうと非常に危険です。
対応策として
定期的に外部の目を入れる
虐待研修などを通し施設支援が適切に行われているか学ぶ
他の施設を見学し良い部分を取り入れる
といった対応が挙げられます。
職場風土は適正な支援をおこなううえで基本となる要素となります。
閉鎖的でネグレクトが起きやすい施設環境になってしまわないよう充分注意しましょう。
これってネグレクト?と感じたら
では、もしネグレクトと思われる行為をしている職員を見かけたり、利用者や家族から相談を受けた際はどのように対応すればよいでしょうか。
介護に従事するものは虐待と思われるものは速やかに報告する義務があります。
したがって、虐待(疑いも含む)を見たり、聞いたりした時点で迅速に各部署の責任者、施設長などに報告をしなければなりません。
虐待防止法の1つ「高齢者虐待防止法」を例に紹介すると
第二十一条養介護施設従事者等は、当該養介護施設従事者等がその業務に従事している養介護施設又は養介護事業(当該養介護施設の設置者若しくは当該養介護事業を行う者が設置する養介護施設又はこれらの者が行う養介護事業を含む。)において業務に従事する養介護施設従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。
法規検索 高齢者虐待防止法より
と明記されています。
虐待と疑われる時点で速やかに報告しなければならない義務が介護施設に勤める職員にはあるのです
その際に考えられるのが、職員をかばってしまい報告を怠ってしまうことです。
人間関係が悪化してしまうなどが頭をよぎり、ネグレクトと思われる行為を目撃しても見て見ぬ振りをしてしまおうと考えてしまうかもしれません。
しかし、報告をしないということは法律違反になってしまいます。
疑問に感じた時点で責任者などに迅速に相談するよう心がけましょう。
スムーズに対応するためには、あらかじめ虐待(ネグレクト)が発生した際の対応を周知しておくことが有効です。
ネグレクトは迅速かつ適切な対処が、組織として求められるのです。
まとめ
今記事では介護施設で発生してしまうネグレクトについて紹介しました。
人としての尊厳を傷つける行為は絶対にあってはいけません。
とはいえ、過度なストレスや環境から正常な判断ができず、結果的にネグレクトに発展してしまうといったケースは多々あります。
そうならないためにも、常に周りと協力しながら利用している方のニーズを受け止め正しく支援していくことが求められます。
介護という仕事は人を支える素晴らしい仕事ですが、その分与えられた責任が大きいのも事実です。
ネグレクトに発展する前に施設全体で未然に防ぐ方法を考える機会をつくり、職員も利用者も安心して過ごせる介護施設を築いていきましょう。