私たちが普段よく耳にする「施設ケアマネ」「居宅ケアマネ」ですが、どのような違いがあるのかご存知でしょうか。
そこで、今回は知っているようで意外と知らない「施設ケアマネ」と「居宅ケアマネ」の違いや、施設ケアマネと居宅ケアマネの兼務について解説していきます。
本記事を読むことで、施設ケアマネと居宅ケアマネの違いを理解することができるはずです。
それでは本文に進んでいきましょう。
施設ケアマネと居宅ケアマネは兼務できる?
まず結論からいいますと、施設ケアマネと居宅ケアマネを兼務することはできません
しかし、各施設ごとの条件とケアマネージャーの業務に支障が出ない場合なら、他の職務を兼務することができます。
例えば施設ケアマネと介護職、居宅ケアマネと事務職といったように、ケアマネージャーが他の職務を兼務することができるということです。
施設ケアマネと居宅ケアマネの違いは?
ケアマネージャーの介護保険制度上の正式名称は「介護支援専門員」です。
「施設ケアマネ」も「居宅ケアマネ」も同じケアマネージャーという職業なのですが、 介護施設と居宅介護支援事業所のどちらに勤務しているかや、業務の内容が少し違うことから呼び方が違います
それでは、施設ケアマネと居宅ケアマネの業務内容が具体的にどのように違うのかを、それぞれ比較しながら
みていきましょう。
勤務する事業所
先ほど少し触れましたが、施設ケアマネと居宅ケアマネは勤務する事業所が違います。
施設ケアマネの勤務先は、特養や老健といった介護施設です。
一方で居宅ケアマネは居宅介護支援事業所に勤務しています。
担当する対象者と人数に違いがあるには理由がある
施設ケアマネと居宅ケアマネは、それぞれ担当する対象者と担当できる人数に上限があります。
施設ケアマネが担当する対象者は、介護施設に入所している高齢者です。
一方で居宅ケアマネの担当は、自宅で生活している高齢者が対象になります。
そしてそれぞれのケアマネージャーが受け持つことができる人数は次のとおりです。
・施設ケアマネ:最大100件
・居宅ケアマネ:最大35件
このように、施設ケアマネと居宅ケアマネでは受け持つことができる担当の人数に3倍近くの差があるのです。
なぜ同じケアマネージャーでも、これほど受け持つことができる人数が違うのでしょうか。
理由は、それぞれのケアマネージャーが担当している利用者が生活している場所の違いにあります。
居宅ケアマネが担当している利用者は基本的に在宅で生活しているため、ケアマネージャー自身が利用者の自宅へ足を運んだり、家族の都合に時間を合わせたりする必要があります。
一方で施設ケアマネが担当する利用者は、施設ケアマネが勤務する施設内で生活をしています。
そのため、施設ケアマネが利用者の自宅へ足を運んだり、家族の都合に合わせてスケジュールを調整したりする必要がありません。
つまり、施設ケアマネと居宅ケアマネの受け持つことができる担当人数の差は、利用者の生活環境や同居家族の状況などがそれぞれ違うことが大きく影響しているといえます
業務の内容の違い
施設ケアマネと居宅ケアマネの業務内容には違いがあります。
ケアプランの作成やサービス担当者会議、利用者や家族との面談・相談業務などは共通の業務ですが、次の2つの業務内容は大きく違います。
・サービス事業所などの連絡・調整業務
・ほかの職務との兼務
上記が施設ケアマネと居宅ケアマネの業務内容が大きく違う2つです。
居宅ケアマネが担当している利用者は、訪問介護やデイサービスなどの介護サービスを利用しながら自宅で生活をしています。
利用者の予定に合わせて、サービス事業所の介護サービスを調整するのが居宅ケアマネの業務だといえます。
このような利用者とサービス事業所をつなぐ業務は、施設ケアマネにはほとんどありません。
一方で、施設ケアマネは他の職務を兼務してる場合が多い傾向があります。
特に多いのが介護職員との兼務です。
これには介護職員の人材不足という理由もあるのですが、それとは別にもうひとつ理由があります。
施設ケアマネがケアプランを作成する際にもっとも意識することは「利用者が快適に過ごすことができるか」です。
施設ケアマネが介護職員として利用者の介護にあたることで「利用者が普段どのように過ごしているか」「利用者にとって適切なサービスは何か」を確認することができ、結果的により良いケアプランを作成することができるのです。
ですから、施設ケアマネが介護職員を兼務するのは、一概に「大変なこと」とは言い切れません
求められること
居宅ケアマネは利用者の自宅に出向き、利用者の自宅での生活状況やその中での問題点を把握するマネジメント能力が求められます。
また自宅で生活している利用者の多様なニーズに応える必要があるため、施設ケアマネと比べて取り扱う介護サービスも多く、関わる関係者の人数も多くなります。
ですから外部の事業所の職員と関わることも多く、サービス事業所や医療機関のスタッフとのコミュニケーション能力が求められる職業だといえるでしょう。
一方で施設ケアマネは、自分が勤務している施設の利用者を担当しているので、 普段利用者を介護している職員とコミュニケーションをとる能力が求められます。
また介護職の業務を兼務することもあるので、介護の技術や知識も求められるといえるでしょう。
どの業種もコミュニケーションは大切ですが、特に居宅ケアマネは人見知りする人にとっては難しいかもと思います
ケアマネージャーが兼務したときのメリット・デメリット
ケアマネージャーがほかの職務を兼務するメリットは「利用者本人の状況がわかる」です。
どれだけ利用者の情報を介護記録や申し送りなどで把握していたとしても、実際の状況と異なることがあります。
自分自身が介護職やヘルパーとして直に利用者と関わることで、新たな問題や課題を把握することができて、より良いケアプランを作成することができるようになります。
まさに「百聞は一見に如かず」とはこのことで、これはケアマネージャーがほかの職務を兼務したときの最大のメリットだといえるでしょう
一方で、ケアマネージャーがほかの職務を兼務するデメリットは「残業時間が増えて、体力面で負担が大きくなる場合がある」です。
ケアマネージャーが介護職員やヘルパーなどを兼務した場合、どうしても時間が足りなくなることが多くなります。
そして時間が足りないので、遅くまで残業してケアマネージャーの業務をこなさないといけない、という状況になると体力面で負担が大きくなってしまいます。
「デスクワークがメインだと思っていたのに、思っていたよりキツい…」ということにならないように、日頃から業務の割合をコントロールしておくことが重要です
まとめ
今回は施設ケアマネと居宅ケアマネの違いと、施設ケアマネと居宅ケアマネの兼務について解説しました。
施設ケアマネと居宅ケアマネの兼務はできませんが、ケアマネージャとほかの職務の兼務は可能です。
そして、施設ケアマネと居宅ケアマネでは業務の内容が少し違いますが、どちらもやりがいのある職業だといえます。
そんな、高齢者の生活全体を支援するケアマネージャーという職業に挑戦してみてはいかがでしょうか。