虐待 過去最多

介護福祉士 資格証

 

2023年度に介護施設職員による高齢者虐待が過去最多を記録したというニュースが報じられ、多くの人が驚きや憤りを感じたことでしょう

介護の現場に身を置く私としても、この問題は他人事ではなく、心を痛めながらも、「なぜこうしたことが起きるのか」という問いを日々考えています。

そして、その背景には介護現場が抱える深刻な課題があることを改めて強調せざるを得ません。

 

虐待の実態-報告される事例とその影響について

 

報道では、介護施設職員による虐待が増加していると伝えられています。

2023年度の鹿児島県内の統計では、介護職員による虐待が13件記録され、これまでで最も多い件数となりました。

さらに、家庭内での虐待は132件、市町村が受けた虐待相談・通報の総数は628件と、いずれも過去最多を更新しています。

施設内での虐待事例には以下のようなものがあります。

介護放棄(13人):入浴回数を減らす、適切な世話を怠るなど。

心理的虐待(8人):暴言や侮辱的な発言。

身体的虐待(4人):叩く、押さえつけるなどの暴力行為。

経済的虐待(4人):本人の同意なしに金銭を引き出す。

性的虐待(3人):プライバシーの侵害や不適切な身体接触。

南日本新聞より

これらの行為が利用者やその家族に与える影響は計り知れません。

高齢者は自分の意思を表現しにくいことも多く、虐待の発見が遅れるケースもあります。

施設に対する信頼が揺らぐ中、介護職員全体への不信感を招く恐れもあり、業界全体にとって重大な問題です。

 

 

 

虐待が起きる現場の苦悩と複雑な背景

 

介護職員による虐待は、決して正当化されるべきものではありません。

しかし、その背景には複数の要因が絡み合っており、単純に「職員の質の問題」と片付けられるものではありません。

現場の視点から、その根本的な原因を掘り下げていきます。

 

 

人手不足による過重労働

 

介護業界では慢性的な人手不足が続いています。

一つの施設で対応すべき利用者が増え続ける中で、職員1人あたりの業務量は増加の一途をたどっています。

特に認知症の利用者が多い施設では、個別のケアに膨大な時間がかかるため、時間に追われる状況が日常化しています。

「1日に複数人の利用者の対応をしながら、記録や報告書も作成しなければなりません。食事介助や入浴介助も時間との戦いで、精神的にも肉体的にも余裕がない中で仕事を続けています。」

このような環境では、職員のストレスが増大し、感情のコントロールが難しくなることがあります。

虐待は許されない行為ですが、現場の職員が追い詰められた結果として発生している側面も否定できません。

 

 

新人職員の教育不足

 

介護施設では、人手不足の影響で十分な教育や研修を行う余裕がない場合があります。

特に経験の浅い職員が即戦力として現場に配属されるケースでは、利用者の扱い方やトラブルへの対処法を学ぶ機会が不足していることがあります。

新人職員は教えられる時間が限られている中で業務に追われ、利用者との関わり方が分からず困っている様子をよく見ます。

結果としてミスが増え、それがストレスとなりトラブルにつながることもあり、教育の不足は職員の自信やスキルに直結し、利用者への適切なケアを妨げる要因となります。

 

 

利用者から職員への暴力

 

介護現場では、虐待を受けるのは利用者だけではありません。

逆に、職員が利用者やその家族から暴力や暴言を受けるケースも少なくありません。

これが職員の精神的負担をさらに増加させる要因となっています。

認知症の利用者が突然怒り出し、叩かれることもあり家族から『こんなこともできないのか』と怒鳴られることもあり、正直心が折れそうになる瞬間があります。

このような状況に耐えながら働き続ける職員がいる一方で、それが限界を超えた場合、虐待という形で歪んだ結果が現れることもあります。

 

 

 

解決への道?環境改善が虐待防止につながる

 

虐待を防ぐためには、現場環境の改善と制度的な支援が欠かせません。

ここでは具体的な対策をいくつか提案しますが、望みは薄いでしょう・・(;一_一)

 

介護報酬を増やし、職員の給与を引き上げることで、仕事に対するモチベーションを向上させます。

適切な報酬が得られれば、より多くの人材が介護職を目指すようになるでしょう。

 

介護職員の年間休日を120日以上に増やし、疲労回復のための時間を確保する必要があります。

十分な休息が取れないままでは、職員が疲弊し続けるだけで、例えば、大型連休どころか、週休二日すら取れない現場では心身が追い詰められるばかりです。これでは良いケアを提供し続けるのは難しいです。

 

新規採用の職員に対して、現場で必要な知識やスキルを徹底的に教育する仕組みを整えるべきです。

また、中堅職員や管理職にも継続的な研修を行い、職場全体のスキルアップを図る必要があります。

施設管理者や上層部が現場の状況を定期的に確認し、職員の悩みや問題を吸い上げる仕組みを整えるべきです。

現場の意見を無視した運営では、虐待の防止どころか職員の離職を招きかねません。

 

 

 

まとめ

 

介護職員による虐待の問題は、現場だけでなく社会全体の問題です。

介護職員として、この問題に取り組むためには、現場の声をもっと知ってもらう必要があると感じています。

介護の質を高め、利用者も職員も安心できる環境を作るために、制度や環境を改善していくことが何より重要です。

 

この課題は一朝一夕で解決するものではありませんしメディアも介護士の立場からの情報配信をしていただきたいです。