老人ホーム 強制退去 先立つ

介護福祉士 資格証

 

こんにちは、介護福祉士みきこです。

介護施設で働く女性介護福祉士として、多くのご夫婦が共に老後を支え合うために老人ホームへの入居を選ぶ姿を見守ってきました。

しかし、現実問題として、残念ながらどちらかが先立つ可能性が高いという点も考慮しておかなければなりません。

今回は、夫婦での老人ホーム入居において、片方が亡くなった場合に起こりうる問題や、そうした事態に備えるための事前の心構えについて解説します。

 

夫婦での老人ホーム入居と費用負担の現状

 

厚生労働省のデータによれば、有料老人ホームの月額費用は一人当たり約18万9,982円とされています。

参考 厚生労働省 サービス付き高齢者向け住宅等の月額利用料金より

夫婦で同室入居する場合、食費などの生活費は2人分必要ですが、室料や光熱費などは1.2倍程度で済むことが多いため、1人での入居に比べてコスト面でのメリットがあるのが一般的です。

 

しかし、これはあくまで「夫婦2人で生活している場合」に限った費用設定。

 

夫婦一緒に入居する契約条件がある施設も少なくないため、片方が先立った際に費用負担が増えることや、生活空間を変えざるを得ない場合があるのが現実です。

片方が先立った場合、残された配偶者には一人分の費用負担が重くのしかかります。

食費などは減るものの、施設の月額費用の基盤である管理費や居住費はさほど変わりません。

 

夫婦入居を前提にした費用設定である場合、片方がいなくなった途端、残された配偶者にとって費用負担が大幅に増えることが懸念されますので、これに備えたプランを事前に検討することが重要です。

 

 

 

片方が亡くなった場合の「退去リスク」

 

老人ホームでは、特に有料の施設において、夫婦同室での入居を前提とした部屋が提供されることがあります。

しかし、どちらか片方が亡くなった場合、同室の契約を続けられず、残された配偶者は1人用の部屋への移動を求められることが多いです。

 

この「移動」は、費用だけでなく、生活環境の変化という観点でも大きな影響をもたらします。

こうした場合、夫婦どちらか一方が先立つと、その部屋を退去し、1人用の部屋に移るよう求められるケースが多いです。

 

この規定は、部屋の稼働率を高める目的もあり、施設側の運営の一環として設けられています。

残された配偶者にとって、長年共に暮らしてきた空間からの移動は心理的な負担となるだけでなく、慣れたスタッフや環境と別れることによる精神的なストレスも増加することが考えられます。

 

こうした状況に直面する可能性があることを、入居前に十分に把握しておくことが大切です。

 

 

 

年金制度と費用負担の変化

 

夫婦の一方が亡くなった場合、残された方が受け取れる年金は「遺族厚生年金」となります。

具体的には、「①亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」か「②死亡した方の報酬比例部分の2分の1と自身の老齢厚生年金の2分の1の合算」のいずれか高い方が支給されるようになっています。

これにより、亡くなった方が受給していた年金額の一部が残された方に渡されるものの、夫婦での生活時と比較して収入が減少するケースがほとんど。

 

残された配偶者が単独で老人ホームの費用を支払っていくことが難しくなるケースも珍しくありません。

 

 

 

「強制退去」の可能性も視野に入れる

 

現実的に、配偶者が先立つことで施設費用の支払いが困難となり、最悪の場合「強制退去」となる事例もあります。

 

有料老人ホームなどの一部施設では、定期的な費用の支払いが不可欠であり、収入が減少するとそれを補填するための支援がない限り、施設に残ることが難しくなります。

強制退去が避けられない場合、次の住まいを見つける必要が生じるため、こうした事態に備えて家族やケアマネージャーと相談を重ねることが重要。

 

入居を検討する際には、こうしたリスクも十分に話し合っておくことで、安心して暮らせる計画が立てられるでしょう。

 

 

 

事前に検討すべき選択肢

 

一方が先立った場合に、残された方が選べる選択肢を事前に把握しておくことも、安定した生活を続けるために役立ちます。

ここでは、代表的な選択肢を挙げてみます。

 

1人部屋への移動
費用負担を抑えるため、同じ施設内の1人部屋に移動する選択肢が取れる施設もあります。

別の施設への転居
現在の施設での費用負担が難しい場合、公的な支援が受けられる施設やより低料金の施設への移転も考えられます。

在宅介護への移行
状況によっては、在宅での介護や地域のデイサービスなどを利用することで、施設を出てからも支援を受けながら生活を続けることも可能です。

ケアマネージャーや福祉相談窓口でのサポート活用
地域の包括支援センターやケアマネージャーに相談し、利用可能なサービスや支援制度を紹介してもらうことで、退去後の生活設計をサポートしてもらえます。

 

 

 

家族と事前に話し合う重要性

 

介護福祉士として強調したいのは、入居する前から家族と十分に話し合い、配偶者が先立った際の選択肢や、実際の支援体制について確認しておくことの重要性です。

家族が入居後に初めて事実を知り、慌てて対処するよりも、事前に具体的な方向性や相談相手を決めておくことで、実際に事態が起きた際にスムーズに対応することが可能です。

 

あまり前向きな話ではありませんが、現実的にその日が来ることを考えておきましょう。

 

 

 

将来への備えと心構え

 

「なんとかなる」という楽観的な気持ちも大切ですが、実際に夫婦のどちらかが先に亡くなることは現実的に高い確率で起こります。

介護士としても、ご夫婦ができるだけ仲良く健康で長生きしていただきたいと願っていますが、年齢を重ねるほど、残される方の生活に必要な備えが重要になります。

 

入居に際して「万が一」の場合に備え、家族や周囲と協力しながら、安心して老後を過ごすための準備を進めていくことが大切です。

 

 

 

夫婦で老人ホームに入居するメリット・デメリット

 

夫婦で老人ホームに入居することには、さまざまなメリットとデメリットがあります。

ここでは、それぞれの側面について詳しく説明します。

 

 

メリット

 

安心感とサポート

夫婦で一緒に老人ホームに入居することで、お互いに安心感を持つことができます。

特に、長年連れ添ったパートナーと一緒に過ごすことで、精神的な安定が得られます。

また、介護が必要な場合でも、夫婦でサポートし合うことができるため、心強いです。

経済的なメリット

夫婦同室で入居する場合、費用が抑えられることがあります。

例えば、食費は2人分かかりますが、室料や光熱費は1.2倍程度で済むことが多いです。

これにより、経済的な負担が軽減されます。

社会的なつながり

老人ホームでは、他の入居者との交流が促進されます。

夫婦で入居することで、他の夫婦や個人と交流する機会が増え、社会的なつながりが広がりますので、孤独感が軽減され、充実した生活を送ることができます。

介護サービスの充実

老人ホームでは、専門の介護スタッフが常駐しており、必要な介護サービスを受けることができます。

夫婦で入居することで、双方が適切な介護を受けることができ、安心して生活することができます。

 

 

デメリット

 

費用の問題

夫婦で老人ホームに入居する場合、費用が高額になることがあります。

特に、別々の部屋に入居する場合は、費用が倍になるため、経済的な負担が大きくなります。

また、夫が先立たれた場合、遺族厚生年金の受給額が減少し、経済的な負担が増加することがあります。

環境の変化

老人ホームに入居することで、住み慣れた自宅を離れることになります。

特に、高齢者にとって環境の変化は大きなストレスとなることがあります。

新しい環境に適応するまでに時間がかかることがあり、精神的な負担が増えることがあります。

プライバシーの問題

夫婦同室で入居する場合、プライバシーの確保が難しくなることがあります。

特に、介護が必要な場合、介護スタッフが頻繁に出入りするため、プライバシーが侵害されることがあります。

また、他の入居者との共有スペースが多いため、個人の時間や空間が制限されることがあります。

強制退去のリスク

夫が先立たれた場合、費用を払い続けることができず「強制退去」になることもあります。

これは、残された配偶者にとって非常に大きなストレスとなります。特に、高齢者にとって環境の変化は大きな負担となるため、強制退去は避けたいところです。

 

 

 

 

まとめ

 

夫婦で老人ホームに入居することは、共に安心して老後を過ごせる良い選択肢です。

しかし、片方が先立った場合の生活費の増加や移動、さらには退去のリスクなど、さまざまな課題も現実に存在します。

入居する際には、こうしたリスクや負担を十分に話し合い、準備を整えておくことで、残された配偶者が安定した生活を送れる可能性が高まります。

 

将来のことを考え、周囲と協力しながら計画的に準備を進めることが大切です。