傾聴・受容・共感という言葉、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
この言葉は、国家資格である介護福祉士試験おいても出題される大切な知識です。
老人施設によっては、傾聴を専門に行う「コンシェルジュ」というポジションもあることから、その重要さを伺うことができます。
今回は傾聴・受容・共感とはなにか、介護職になぜ重要なのかを分かりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。
介護職に大切な傾聴・受容・共感とは
傾聴・受容・共感とは、他人とコミュニケーションをとるうえで欠かせない3原則のことを指します
介護現場においても、利用者との会話で重要視される場面が数多くあります。
傾聴は、相手の話をただ聞くだけでなく、相槌をうったり積極的に耳を傾けながら「しっかりと聞いています」ことを表現しながら聞くことで、受容・共感といった手法を用いながら使われます。
傾聴・受容・共感を介護現場でもうまく活用することで、信頼関係や安心感を相手に与えることができます。
それでは、傾聴・受容・共感の3つについてさらに詳しく紹介します。
傾聴とは
傾聴とは、相手の話をただ聞くだけでなく、相槌をうったり積極的に耳を傾け「ちゃんと聞いている」ことを相手に分かってもらいながら聞くことです。
この傾聴は、介護現場で活用する機会が多くあります。
- 利用者の不安感の解消
- 信頼関係を築き安心感を感じてもらう
などといったときに、傾聴を上手に活用することで利用者との関係性を深めることができます。
受容とは
受容とは、話し手自身あるいは話し手の言葉や気持ちを、先入観なくありのまま受け止めることです
傾聴をする際に批判や否定をすることなく、まずは相手の思いをそのまま受け止めることが基本的かつもっとも重要です。
話を聞く際は、利用者の目線に立ち、感じていることを全て受け止める姿勢が求められます。
この受容ですが、簡単に思えてなかなか難しいスキルです。
人間は一人ひとり価値観や考え方が違うので、相手の話をそのまま受け入れるのに抵抗を感じる場面も少なくありません。
たとえば、利用者が話してるときに、「それはおかしい」や「私ならしません」というように、話しを中断させ、自分の考えをいう行為は「受容」とはいえません。
ついつい自分の正しいと思う意見をいいたくなることもありますが、そのようなときは一歩引いて発言を控えることが求められます。
共感とは
共感とは、他人の考えや主張に、まったくそうだと感じることです
傾聴する際は、共感の気持ちを持って最後まで聴くことが求められ、こちらも大切なスキルになります。
ついつい聞き手は、話に対して何か気の利いたアドバイスしようとしてしまいがちですが、無理におこなう必要はありません。
相手の立場になって気持ちを肯定するだけで、何より相手の気持ちが楽になる場合も多いです。
共感することで、話し手は「この人はわたしの気持ちを理解してくれている」と感じ、安心感が生まれ、次第に心を開いてくれるようになります。
介護職に求められる傾聴スキルとは
つづいて、傾聴・受容・共感を介護現場で実践するためのポイントを紹介します。
①相手の話しを最後までしっかり聞く
②自分の意見は最後に、押し付けないように
相手の話しを最後までしっかり聞く
「話を最後まで聞く」というのは、もっとも基本的なものとなりますが、なかなかできない人も多く大切なポイント
まずは、利用者の気持ちを最後までしっかり聞くことを意識しましょう。
話に詰まる場面があっても、急かしたりせず、じっくり待つことも大切です。
話された気持ちを受け止めて寄り添いながら、話の中で喜怒哀楽の感情に合わせて同調する際に、もう1度ご本人様の言葉を繰り返すとより効果的です。
注意点として、「○○さんの気持ちよく分かります」といった安易な同調はやめましょう。
利用者と話しを聞いているあなたは別の人物です。
感じ方や気持ちが同じで、共感する姿勢を示すなら「私だったとしても」など、発言の前にクッションを置くようにしましょう。
自分の意見は最後に、押し付けないように
自分が持っている意見の方が正しいと思い押し付けないようにすることも大切です
話を聞き終わった後、ついつい相手の考えに対し、自分の意見を重ねてしまい理解を求めてしまう場合もありますが、そのような行為は避けましょう。
相手の話しを聴くときは決して気持ちを否定したり、批判することなく、「辛かったですね」「話してくれてありがとうございます」など、同調するような言葉がけを心がけましょう。
話し手が怒っているときも同様です。
「〇〇されてイライラする」と言っていた場合も「そんなことで怒っちゃダメですよ」とすぐにアドバイスするのではなく、「それはイライラしちゃいますね」などそのままの言葉を返すようにするのが効果的です。
介護職員が傾聴するメリット
では、傾聴することで介護職員にどのようなメリットがあるでしょうか。
傾聴で得られるメリットは次のとおりです。
①利用者との信頼関係を築ける
②介護利用者の承認欲求を満たせる
利用者との信頼関係を築ける
傾聴は、介護職として働くうえでとても役立ち、かつ重要なコミュニケーションスキルです。
介護職員にとって傾聴の大きなメリットは「利用者との信頼関係を築くことができる」ことにあります
自分の思いを話しているのにもかかわらず、それを中断して聞き手が話し始めたり、否定したりするような人に心を開きたいと思う人はあまりいません。
話を最後まで真剣に聞いてくれる職員と、反応が薄く話の途中で口をはさむ職員だったら、後者を選ぶ場合が多いのではないでしょうか。
介護の仕事は利用者に信頼され、心を開いてもらうことが始めの第一歩となります。
頼られながら介護するためには、傾聴の力を身につけ利用者とうまくコミュニケーションを取れるようになることがとても大切です。
それは利用者の意見を尊重し、快適に過ごしてもらうためでもあり、職員が介護をスムーズにおこなうことにもつながります。
傾聴は利用者の本音を引き出し、よりよい介護を提供できるようになるための重要なスキルです。
介護利用者の承認欲求を満たせる
人は誰しもが
- 「自分の話を聞いてもらいたい」
- 「理解してもらいたい」
- 「認めてもらいたい」
という承認欲求を少なからず持っています。
介護付老人ホームやデイサービスといった福祉施設を利用している利用者は、活動できる範囲が限られていることが多く、昔に比べ社会とつながっていることを実感できない方も多くいます。
このような方に、自身の考えや思いを話す機会や、不安や悩みを打ち明けることは、不安感の解消や心の安らぎにおいてとても重要な役割を果たします。
自身の話を誰かに傾聴してもらうことで、自己肯定感を高める効果も期待できます
傾聴は介護職員にとって、利用者との信頼関係を築く大切なスキルの1つなのです。
まとめ
介護職には傾聴・受容・共感とはなにか、介護職に求められる傾聴スキルについて紹介しました。
介護は人の気持ちに立って支援することが求められます。
そのためには傾聴するスキルを上手に活用することで、より質の高い支援に発展させていくことが可能です。
さらに、傾聴する力は介護の現場だけではなく家族間や職場内など役立つ場面は数多くあります。
利用者の信頼関係を築くため、支援業務を円滑に進めるため、話を聞く際は会話内容を否定したりせず最後まで聞く習慣をつけ、傾聴スキルに磨きをかけてみてはいかがでしょうか。