介護の仕事をしていると入浴介助に関わる場面が出てきまが、入浴介助の正しい順番をご存じでしょうか?
初めて入浴介助に関わる方は悩むことも多いと思います。
入浴介助は事前の準備と心構えがないと利用者さんに不快感を与えてしまう可能性があります。
不快感を与えてしまうだけでなく、時には危険にさらしてしまう可能性も出てきます。
そこで入浴介助の洗う順番とポイントを解説します。
今回この記事をかくため総合病院の入院病棟や有料老人ホーム、デイサービス、訪問入浴で勤務経験があり入浴介助も行っていたA氏からも話をききました。
その話も交えながら解説していきたいと思います。
入浴介助で意識しておくポイント
まずは、入浴の目的を理解し、意識しておくことが大切です。
入浴介助の目的は2つあります。
⓵皮膚を清潔に保ち、感染症を予防する
⓶心身の機能向上とリラックス
目的の1つ目である「皮膚を清潔に保ち、感染症を予防する」とは、入浴することで皮膚に付着した外部からの汚れや細菌を落とし感染症を予防します。
2つ目の「心身の機能向上とリラックス」とは、正しく入浴することで血液の循環が促進され、代謝が活性化されます。また、適温のお湯につかることで副交感神経が働き睡眠不足やイライラを解消し、快適な1日を過ごしやすくします。
目的を意識しつつ、入浴介助では他にも意識すべきことがあります。
とくに高齢者やけがをしている方の入浴介助をする場合は、常に危険を意識することが大切です。
入浴の手順をただ淡々とこなすのではなく、常に利用者さんの体調を気づかいましょう
入浴中は体調の変化が起きやすく、環境も良いとは言えません。
床が滑りやすいことで転倒の可能性があります。
自力で動くことができない方は褥瘡ができていることや、拘縮により身体を動かすことで強い痛みを伴うこともあります。
肌の乾燥が強い方も入浴時や洗体時に痛みを感じる場合があります。
痛みがあっても言い出せない方や伝えることができない方もいるため、介助している介護士が気付いてあげられるようにすることが大切です。
最後にもう一つ意識しなければならないことは相手のADLです。
ご自身でできることはしてもらうことが大切。
完全に他人任せにしてしまうことで、生活に必要な機能や思考が低下してしまいます。
簡単な作業は「ご自身でできますか?」と声をかけてみましょう。
入浴前のポイント
まずは必要物品や確認の忘れがないかチェック!
それが体調の変化や利用者さんを危険にさらすことを防ぎます。
空腹時や食事直後の入浴を避けることができるように介護士が確認をします。
なぜ避けなければならないのかご存じでしょうか?
空腹時に入浴することで食欲がなくなってしまうことや、食直後に入浴することで消化不良を起こしたり、心臓に負担をかけたりしてしまうためです。
入浴介助をはじめる前に浴室の準備をしましょう。
浴槽にお湯を張り、浴室と脱衣所を温めておきます。
浴室暖房があれば利用します。脱衣所には暖房器具えお置くと便利です。
冬場はヒートショックが起きやすくなります。寒暖差が少なくなるように意識しましょう。
利用者さんの体調の確認も大切です。
体調が悪いまま入浴することで悪化してしまう可能性もあります。
バイタルサインをチェックしましょう。
また利用者さんによっては、自覚症状がなかったり、あっても言えない・伝えることができない場合もあるため表情に変化はないか確認できると良いです。
入浴中のポイント
お湯の温度は必ず介護士自身で確認したあと利用者さんにも確認しましょう
お湯の温度は好みもあるため臨機応変に対応していきます。
洗髪・洗体が終わったら浴槽に入りますがのぼせてしまう危険もあるため、お湯につかる時間は5分程度に留めてください。
浴槽や浴室から出る時はバランスを崩して転倒などないようにゆっくりでように声をかけてください。
入浴後のポイント
頭部や体の水分をしっかりタオルで拭きます。
とくに足の裏が濡れたままだと転倒の危険性が上がるためきちんとふき取りしましょう。
入浴後の体調変化に気を付け、可能であれば水分を取ってもらうようにお伝えする。
入浴前と同様に血圧や体温の異常がないか確認します。
入浴介助の洗う順番
洗う順番に「絶対こうしなければならない」という厳密なルールはありません
利用者さんの希望に沿って洗うことが1番大切なのです。
しかし、洗う前に湯音を確認することや足元からお湯をかけていくこと、といった正しい手順をふむことで相手に不快感を与えたり、身体へ負担をかけたり、けがをかせてしまったりという事態を防ぐことができます。
基本的な入浴の手順
⓵足元からお湯をかける
⓶髪の毛を洗う
⓷上半身を洗う
⓸下半身を洗う
足元からお湯をかける
シャワーのお湯が適温になっているか確認後、身体に負担がかからないように心臓から遠い足元からお湯をかけていきます。
相手の身体が温まったことを確認してから洗髪へうつります。
もしも、シャワーチェアなどを使用する場合は必ずお湯で温めてから座ってもらいましょう。
洗髪
シャワーのお湯が適温であるか、まずは介助者が確認します。
利用者さんの好みの温度もあるため、必ず確認しましょう。
相手の髪の毛にお湯をかけるときは声掛けを行うことが大切です。
耳に水が入らないように注意しながら、頭部全体にお湯をかけて予洗いをします。
手が自由に使える方であれば耳をふさいでもらうと洗いやすくなります。
場合によってはシャンプーハットを活用しても良いでしょう。
自身で耳をふさぐことができない方の場合は、介護士が片方ずつ耳をふさいで左右に分けて洗います。
洗う時には、頭皮に湿疹や傷がないかチェックしましょう。
予洗いが終わったらシャンプーを手に取り、泡立ててから頭皮につけます。
洗う時は指の腹を使って優しく洗います。力加減の好みを相手に確認しながら行います。
洗体
身体を洗う順番の基本は上半身(顔・首→手先から腕→胸・背中)が終わったら下半身(足先→ふくらはぎ→太もも→おしり→陰部・肛門)です。
なお陰部については利用者さん自身に洗っていただき、必要に応じて介助します
高齢者は肌が乾燥しやすく、弾力がありません。
表皮剥離のリスクも高く、どの部分を洗う場合も強くこすらないことがポイントです。
しかし本人の好みもあるため、利用者さんに確認して臨機応変に対応しましょう。
もしも、利用者さまが片麻痺の場合でもデリケートな部位などに配慮し、自身で洗うことが可能ならば自身で洗うように促します。
介助中は、利用者さんの麻痺がある側に立って身体を支えます。
入浴介助で必要なもの
実際に入浴介助を行う時は、必要なものをあらかじめ準備しておきましょう。
使いたいときに使いたい道具がそろっていれば利用者さんを待たせることなく介助ができます
・タオル
・着替え
・必要に応じてオムツやリハビリパンツ
・滑りにくい靴(介護士が使用する)
・エプロン(介護士が使用)
・手袋(介護士が使用)
・シャンプー・リンス
・ボディソープ
・ドライヤー
・必要に応じて軟膏などの処置道具
タオルは吸水性が高く、サイズも大きいものを選ぶと良いでしょう。
病気の方や要介護者は、身体を拭いてもらっている間の姿勢すら辛いことも十分に考えられるため、拭く時間を短縮するように心がけます。
着替えやオムツ、ドライヤー、軟膏などは洗面所(脱衣所)に置きましょう。
まとめ
入浴介助の洗う順番とポイントを解説しました。
利用者さんの状態により臨機応変な対応が求められる入浴介助ですが、利用者さんの笑顔が見られる機会でもあります。
ポイントをチェックし利用者さんが気持ちよく入浴できるように介助していきましょう。