車いす 食事 メリット

介護福祉士 資格証

 

こんにちは、介護福祉士みきこです。

 

介護の現場では、「車椅子のまま食事をするのがいいのか、それとも椅子に移乗したほうがいいのか?」という問題がよく議論されます。

利用者にとって安全で快適な食事環境を提供することは非常に重要ですが、それをどう実現するかについては考え方が分かれます。

車椅子のまま食事をすることにはメリットもありますが、デメリットも存在します。

 

介護職員の負担軽減や利用者の負担軽減という側面もあれば、姿勢や嚥下(えんげ)の問題、リハビリの機会を逃すといった課題もあります。

施設によっては、「できる限り椅子に移乗して食事をするのが理想」とするところもあれば、「利用者の状態に応じて車椅子で食事をすることも選択肢の一つ」とするところもあります。

 

では、実際の介護現場ではどのような対応が求められるのでしょうか?

 

車椅子で食事をするメリットとデメリットを深く掘り下げ、どのような利用者に適しているのかを詳しく解説します。

また、椅子のまま食事をすることのメリットや、適切な環境を整えるための方法についても考えていきます。

 

車椅子で食事をするメリットとは?

 

車椅子で食事をすることにはいくつかの大きなメリットがあります。

介護施設や病院では、多くの利用者が車椅子を使用しているため、食事の際にわざわざ移乗するのが難しいケースもあります。

そのため、車椅子のまま食事をすることが一般的になっている施設もあります。

 

① 介護者の負担を軽減できる

車椅子のまま食事をする最大のメリットは、介護者の負担を減らせることです。

特に、人手が足りない施設では、一人ひとりを椅子に移乗させる作業に時間と労力がかかります。

1日3回の食事のたびに移乗を行うと、それだけで職員の負担が増え、他のケアに時間を割くことが難しくなります。

車椅子のまま食事をすることで、スムーズに食事の介助ができるようになります。

 

② 転倒のリスクを減らせる

移乗の際には、利用者がバランスを崩して転倒する可能性があります。

特に、筋力が低下している高齢者や、認知症の進行により判断力が低下している方は、立ち上がる際にふらつくことがあります。

車椅子のまま食事をすることで、こうしたリスクを最小限に抑えることができます。

 

③ 姿勢の安定が期待できる

車椅子には背もたれや肘掛けがあるため、体幹が弱い利用者でもある程度安定した姿勢を保つことができます。

特に、座位保持が難しい方にとっては、椅子に移乗すると姿勢が崩れやすくなるため、車椅子のまま食事をするほうが適しているケースもあります。

 

④ 食事の時間をスムーズに進められる

移乗に時間がかかると、食事の時間が短くなってしまうことがあります。

食事の時間が限られている施設では、利用者一人ひとりを移乗させることで全体の流れが滞ってしまうこともあります。

車椅子のまま食事をすることで、食事の時間を確保しやすくなるのもメリットのひとつです。

 

 

 

車椅子で食事をするデメリットとは?

 

一方で、車椅子で食事をすることにはデメリットも存在します。

特に、姿勢や嚥下の問題が大きく関わってくるため、利用者の状態によっては必ずしも最適とは言えません。

 

① 姿勢が崩れやすく、誤嚥のリスクが高まる

食事をするときの理想的な姿勢は、背筋を伸ばし、90度に近い角度で座ることです。

しかし、車椅子の座面はやや後傾していることが多く、深く座ると骨盤が後傾して猫背になりやすくなります。

その結果、食べ物を飲み込む際に誤嚥のリスクが高まり、誤嚥性肺炎の原因となることもあります。

 

② 食事に適したテーブルの高さを確保しにくい

車椅子の高さや形状によっては、食事の際にテーブルの高さが合わないことがあります。

テーブルが高すぎると、腕が上がりすぎて食べにくくなり、逆に低すぎると前かがみになってしまい、姿勢が悪くなります。

こうした食事環境の調整が難しい点がデメリットとして挙げられます。

 

③ リハビリの機会を失いやすい

椅子に移乗することは、足腰の筋力を維持するためのリハビリの一環にもなります。

食事のたびに移乗することで、利用者の「立ち上がる力」を維持することができます。

しかし、車椅子のまま食事を続けると、立つ機会が減り、結果的に筋力が低下してしまう可能性があります。

 

④ 精神的な切り替えが難しくなる

食事の際に椅子に移乗することで、「今から食事の時間だ」という意識を持ちやすくなります。

しかし、車椅子のままだと、移動と食事の区別がつきにくくなり、食事に対する意識が低下することがあります。

特に、認知症の方にとっては、環境の変化が食事のリズムを作る重要な要素になるため、椅子に移乗することが有効な場合もあります。

 

 

 

椅子のまま食事をするメリットとは?

 

「椅子のまま食事をする」ことには、車椅子にはないメリットがあります。

特に、姿勢の保持や食事環境の整備という点では、椅子のまま食事をするほうが理想的なケースも多いです。

 

① 正しい姿勢を保持しやすい

専用の椅子に移乗することで、背筋を伸ばした適切な姿勢で食事をとることができます。

誤嚥を防ぐためにも、90度に近い座位をとることは非常に重要です。

 

② 筋力の維持につながる

移乗を行うことで、下肢の筋力を維持することができます。

たとえ少しの動作でも、日常的に立ち上がる機会を作ることで、筋力の低下を防ぐことができます。

 

③ 食事の時間を意識しやすい

食事の時間になったら椅子に移乗するという習慣ができると、利用者自身も「今から食事をする」という意識を持ちやすくなります。

このように、車椅子のまま食事をするか、椅子に移乗するかは、利用者の状態や施設の方針によって適切な選択をする必要があります。

 

 

 

どんな利用者に車椅子のまま食事が適しているのか?

 

車椅子のまま食事をするか、椅子に移乗して食事をするかは、利用者の状態に応じて適切な方法を選ぶ必要があります。

特に、車椅子での食事が適している利用者には、いくつかの特徴があります。

 

① 座位保持が難しい利用者

重度の身体障害や神経疾患の影響で、長時間椅子に座るのが困難な利用者は、車椅子のまま食事をするほうが安全です。

車椅子には背もたれやサポートクッションがあり、体幹を安定させやすいので、姿勢が崩れにくくなります。

 

② 認知症が進行しており、移乗がストレスになる利用者

認知症の方の中には、移乗を嫌がったり、不安を感じたりする人もいます。

毎回移乗のたびに混乱したり、抵抗を示したりすると、食事そのものがスムーズに進まなくなることもあります。

そのような場合、車椅子のまま食事をすることで、心理的な負担を軽減し、落ち着いた状態で食事を楽しんでもらうことができます。

 

③ 介護職員の介助が必要で、安全に食事をするためのサポートが求められる場合

全介助が必要な利用者は、車椅子のままのほうが介護職員が適切な角度からサポートしやすくなることがあります。

特に、嚥下障害がある方の場合、適切な角度でスプーンを運ぶことが求められるため、車椅子のリクライニング機能を活用して安全に食事を進めることができます。

 

④ 施設の環境や職員配置の影響で、移乗の負担が大きいケース

介護施設では、職員の数が限られていることが多く、食事のたびに全員を椅子に移乗させるのが現実的に難しいことがあります。

そのため、安全性や業務効率を考えて、車椅子のまま食事をするケースが増えています。

ただし、その場合でも、利用者の姿勢や食事の環境をしっかり整えることが重要です。

 

このように、車椅子での食事が適している利用者も一定数存在します。では、逆に椅子に移乗したほうが良いケースについても考えてみましょう。

 

 

 

椅子のまま食事をするべき利用者とは?

 

椅子のまま食事をすることには、車椅子では得られないメリットがあります。

特に、以下のような利用者には、できる限り椅子に移乗して食事をしてもらうことが推奨されます。

 

① 座位保持が可能で、自分で姿勢を調整できる利用者

姿勢を自分で調整できる利用者は、車椅子よりも椅子のほうが適した食事環境を作れます。

食事の際に背筋を伸ばしやすく、食べやすい姿勢を維持できるため、誤嚥のリスクを低減できます。

 

② 下肢筋力が残っており、リハビリを兼ねた食事環境が望ましい場合

移乗ができる利用者は、食事のたびに立ち上がることで足腰の筋力維持につながります。

特に、今後の自立を目指している方や、リハビリを積極的に取り入れている方には、移乗の機会を確保することが重要です。

 

③ 食事に集中しやすい環境を整えたい利用者

車椅子のままだと、食事と移動の切り替えがうまくできない場合があります。

しかし、椅子に移乗することで、「食事の時間」として環境を切り替え、集中しやすくなるメリットがあります。特に、食が細い方や、食事への意欲が低い方には、環境の変化が有効なことがあります。

 

④ 食事の姿勢を細かく調整する必要がある利用者

施設によっては、車椅子での食事環境が十分に整っていないこともあります。

例えば、テーブルの高さが合わないと食事がしにくくなりますし、適切なサポートがないと前傾姿勢を維持するのが難しくなります。

こうしたケースでは、椅子に移乗して適切な環境を作ることが推奨されます。

 

 

 

施設の方針と介護職員の意識の違い

 

介護の現場では、「車椅子のまま食事をするべきか、椅子に移乗するべきか?」という議論が絶えません。

これは、施設の方針と介護職員の考え方が一致していないことが原因になることもあります。

 

① 施設によって方針が異なる

施設によっては、「食事の際には必ず椅子に移乗する」というルールを設けているところもあれば、「利用者の状態に応じて車椅子のままでもよい」としているところもあります。

この違いは、施設の理念や人員配置、職員の考え方によるところが大きいです。

 

② 現場の職員によって対応が違うこともある

同じ施設内でも、職員によって考え方が異なることがあります。

例えば、「できるだけリハビリのために椅子に移乗させたい」と考える職員と、「業務効率や利用者の負担を考えて車椅子のままがいい」と考える職員がいる場合、意見が対立してしまうことがあります。

こうした違いを解消するためには、チームでの話し合いが重要です。

 

③ 介護職員の負担と利用者の快適さのバランスが難しい

介護職員の負担を考えると、全員を椅子に移乗させるのは現実的に難しい場合もあります。

一方で、利用者にとって最適な食事環境を提供することも大切です。

これを両立させるためには、利用者ごとに最適な方法を選択しつつ、介護職員の負担を分散させる工夫が求められます。

 

 

 

まとめ

 

車椅子で食事をすることには、介護者の負担軽減や転倒リスクの低減といったメリットがあります。

しかし、姿勢が崩れやすく、嚥下障害のリスクが高まるというデメリットもあります。

 

一方、椅子に移乗することで、適切な姿勢を保ち、食事への意識を高めることができますが、移乗の負担が増えるという課題もあります。

重要なのは、一律に「車椅子が良い」「椅子のまま食事が理想」と決めつけるのではなく、利用者の状態や施設の環境に応じて柔軟に対応することです。

 

介護職員同士でしっかりと話し合い、最適な選択をしていくことが、利用者にとっても職員にとっても良い結果につながるでしょう。