認知症 暴言 妄想

介護福祉士 資格証

 

こんにちは、介護福祉士みきこです。

 

認知症の方が妄想や暴言を口にする場面は、介護に携わる者にとって避けられない現実の一つです。

それは家族であれ、介護職であれ、経験した人々の多くが共通して抱える課題といえます。

しかし、「介護する側が原因を取り除いていないからだ」という意見は、認知症の複雑さや介護現場の実情を十分に理解していない発言です。

 

実際の介護現場は、表面からは見えにくい膨大な努力と忍耐の積み重ねで成り立っています。

この文章では、認知症ケアの本質や介護者の役割、誤解に基づいた批判がもたらす影響などについて詳しく説明します。

 

認知症とは何か?みなさん勘違いしていませんか?

 

認知症は単一の病気ではありません。

大きく分けてもアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症などが存在し、それぞれに異なる特徴があります。

同じ認知症の診断を受けた方でも、記憶障害が顕著な方、見当識障害が目立つ方、または精神的な混乱が強い方など、症状は千差万別。

また、認知症は年齢や環境、健康状態によっても進行の仕方が変化し、脳内の変性が原因である以上、その症状を完全にコントロールすることは困難です。

この多様性を理解することが、まずは介護者や周囲の人に求められます。

 

 

 

妄想や暴言のメカニズム

 

認知症の方が妄想や暴言を見せる理由には、いくつかの共通した背景があります。

その一つが、短期記憶障害や見当識障害です。

 

例えば、財布をどこに置いたか忘れてしまい、「誰かが盗んだ」と考えてしまうのは、記憶が繋がらないために起きる現象。

また、「知らない人が家にいる」と感じるのは、視覚情報が脳で正しく処理されないためです。

このような妄想が引き起こす不安感や恐怖心が、時に暴言となって表れることがあります。

 

こうした症状が現れるたびに、介護者は原因を丁寧に探り、対応策を講じています。

しかし、認知症は病気であり、根本的に脳がダメージを受けている状態。

そのため、原因を完全に取り除くことができるケースばかりではありません。

 

 

 

「介護する側の原因論」の誤解

 

「介護する側が原因を取り除いていない」という主張は、表面的には正論のように聞こえます。

しかし、実際には認知症ケアの現実を十分に理解していない発言と言わざるを得ません。

 

確かに、介護の質によって症状が和らぐケースはありますが、これは「すべての症状を解決できる」ことを意味するものではありません。

暴言や妄想が起きる背景には、介護者の努力では変えられない「病気の本質」があります。

そのため、こうした発言は介護現場の努力を軽視し、さらに介護者に過剰なプレッシャーを与える危険性があります。

 

 

 

介護現場での見えない努力

 

介護者は、認知症の方の生活を支えるために、日々さまざまな工夫を凝らしています。

 

例えば、穏やかに話しかけたり、安心できる環境を整えたり、細かな体調の変化に気を配ったりと、その努力は表には見えにくいものです。

それでも、暴言や妄想が起きる場合があります。

このような場面で、介護者が冷静に対応するのは簡単なことではありません。

一日一時間だけでなく、何ヶ月も何年も続ける中で心が折れそうになることもあるのです。

 

「介護者が原因を取り除いていない」という言葉を投げかけられたとき、その努力が否定されたように感じる介護者も少なくありません。

このような批判が、介護者のメンタルヘルスにどれほど悪影響を及ぼすかを考えてみてください。

 

 

 

医療的アプローチが必要なケースも

 

認知症の症状の中には、介護者の力だけでは対応しきれないものもあります。

特にレビー小体型認知症などでは、幻覚や強い妄想が頻繁に現れることがあります。

これらの症状は、適切な医療的介入や薬物治療が必要な場合があります。

「寄り添えば解決する」といった一面的な考え方では、こうしたケースには対応できません。

この事実を知らずに、介護者だけに責任を押し付けるのは、不公平であり現場の実態を無視しています。

 

 

 

暴言を「個性の一部」として受け止める

 

暴言や妄想を完全に解決することは難しいため、介護者はこれを「個性の一部」として受け止め、冷静に対応することが求められます。

例えば、一年のうち360日穏やかな方でも、5日間だけ強い症状が現れることがあります。

この5日間を「別人のような状態」と認識し、翌日には穏やかな状態に戻る可能性が高いと考えることで、介護者自身も気持ちを落ち着けやすくなります。

こうした対応には、冷静さと忍耐が不可欠です。

 

 

 

家族や周囲のサポートの重要性

 

認知症ケアは、介護者だけで完結できるものではありません。

家族や地域社会、医療機関が一体となって支える必要があります。

特に、介護に直接関わらない家族が無理解な批判や要求をすることは、介護者にとって大きな負担になります。

一方で、家族が理解を深め、協力することで、介護者の精神的な負担が軽減されるだけでなく、認知症の方にとってもより良いケア環境が整います。

 

 

 

介護者を支える社会の視点

 

「認知症ケアは介護者の責任」という風潮を改め、介護者を支える社会を作ることが重要です。

認知症ケアの成功は、個人の努力だけでなく、適切な制度や支援体制があってこそ実現します。

介護の現場で働く人々の努力を正当に評価し、彼らの声に耳を傾ける社会こそ、認知症の方を支える基盤となるでしょう。

 

 

 

まとめ

 

認知症の妄想や暴言に対する対応は、一筋縄ではいきません。

それは、介護者の努力不足ではなく、病気の本質がもたらすものです。

「介護者が原因を取り除いていない」という批判は、現場の実情を知らない発言であり、介護者を傷つけるものとなります。

認知症ケアは、家族や地域、社会全体が一丸となって支えるべき問題。

介護者の日々の努力を認め、彼らを支える仕組みを整えることが、認知症の方にとってもより良い未来を作る鍵となるのです。