こんにちわ、介護福祉士みきこです。
介護の現場で「信頼されている職員」と聞くと、仕事ができる、文句を言わない、いつも頼りにされる――そんなイメージを思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、管理者からの「信頼」が実際には職員を苦しめている場合があることをご存知でしょうか?
何も言わない職員ほど実は心の中で多くを抱え込み、やがて突然辞めることになるケースも少なくありません。
この問題を解決するためには、管理者の考え方や職場環境そのものを見直す必要があります。
本記事では、介護現場で起きている「信頼」の裏側について深く掘り下げ、改善策を考えていきます。
問題のない職員」とされる人ほど抱える問題とは?
介護現場において、「問題のない職員」と管理者から評価される人たちは、実際には多くのストレスを抱えていることが少なくありません。
こうした職員は、不満や意見を表に出すことが苦手だったり、諦めて何も言わなくなったりする傾向があります。
一方で、管理者からすると「この人は大丈夫」「この人には任せておけば安心」と判断されがちです。
その結果、こうした職員はますます頼られるようになり、仕事量や責任がどんどん増えていきます。
しかし、その信頼には大きな落とし穴があります。
職員が言いたいことを口に出せない理由には、「しんどい」と言っても相手にされない、もしくは評価が下がるのではないかという不安があるのです。
特に日本の職場文化では、意見を言うことがネガティブに捉えられる傾向があるため、「自分が我慢すればいい」と考えてしまう人が多いように思います。
その結果、心の中で不満が溜まり続け、ある日突然「もう無理だ」と辞めてしまう――これは介護現場だけでなく、あらゆる職場で共通する現象と言えるでしょう。
さらに深刻なのは、「問題のない職員」という評価が、周囲の職員からは「なんでも一人で抱え込む」「自分たちに仕事を押し付けられる」などの誤解を招きやすい点です。
こうした職員は、管理者からの信頼と周囲からの視線の板挟みになり、自分の立ち位置に悩むことも少なくありません。
主張が多い新人ばかり構う管理者の盲点
新人職員が現場に入ると、どうしても手がかかるのは当然のこと。
指導やフォローが必要なため、管理者が新人に時間を割くのは仕方のない部分もあります。
しかし、その一方で、中堅職員やベテラン職員が「放置」されてしまうケースが後を絶ちません。
管理者としては「問題がない職員」だからこそ優先順位を下げてしまうのでしょうが、それが大きな間違いなのです。
特に中堅職員は、現場の要とも言える存在。
新人が辞めても現場を回せるのは、こうした中堅職員が地道に支えているからに他なりません。
しかし、中堅職員の中には「今さら何を言っても仕方がない」と諦めてしまい、自分から声を上げることをやめてしまう人も少なくありません。
そうした職員を「手がかからない」と評価してしまうことが、管理者の盲点です。
また、新人職員はしばしば管理者に直接自分の意見を言うため、管理者は彼らを優先して対応する傾向があります。
その結果、中堅職員の不満はますます溜まり、「結局自分たちは大切にされていない」と感じる原因になります。
こうした状況が続けば、中堅職員が現場を去るのも時間の問題でしょう。
中堅職員を失うことは、現場にとって大きな損失であるにもかかわらず、管理者がその重要性を理解していないケースが多いのが現実です。
なぜ突然辞めるのか?その裏に潜む本音
「突然辞めます」と退職を申し出る職員に驚く管理者は少なくありません。
しかし、その「突然」には必ず理由があり、その理由が積み重なった結果が退職という形で表面化するのです。
特に「問題がない」とされていた職員ほど、この現象が顕著です。
こうした職員の辞職理由としてよく挙げられるのは、「しんどいけど言えなかった」「管理者に話してもどうせ意味がないと思った」という声。
これは、職場での信頼関係が希薄であることを示しています。
「何でも話してください」という管理者の一言が形骸化しており、実際には本気で意見を聞く姿勢が見られない場合、職員は「言っても無駄」と感じてしまうのです。
さらに、職員同士の人間関係が理由になる場合もあります。
特定の職員が管理者に取り入っているように見えたり、特定の職員だけが優遇されていると感じると、それを不公平と捉える人が現れます。
特に介護現場のようにチームワークが求められる環境では、こうした不満が士気の低下に直結します。
辞める前にこうしたサインに気づくことができれば、対策を取ることができるはずですが、多くの管理者はそれに気づかないまま職員を失ってしまうのです。
「そつなくこなすのが当たり前」の危険性
「信頼されている職員」とされる人たちに共通するのは、「そつなくこなすのが当たり前」と思われていることです。
しかし、その「当たり前」がどれほどの負担になっているかを、管理者は理解していないことが多いのです。
こうした職員は、他の職員のフォローに回ることが多く、時には自分の仕事以上の責任を背負うこともあります。
現場で困ったことが起きれば、真っ先に頼られるのもこうした職員。
最初は「自分がやらないと現場が回らない」と思い、責任感から動くことが多いですが、それが繰り返されると、「自分ばかりが負担を背負っている」という思いが強くなります。
そして、限界が来ると職場を去る決断をするのです。
管理者の「好き嫌い」が職場の空気を壊す
介護現場に限らず、どの職場にも「管理者のお気に入り」が存在することがあります。
その職員が「働きやすい環境」を優先して与えられる一方で、その他の職員が不公平感を抱える構図は、職場全体の士気を下げる原因となります。
特に、管理者が好きな職員だけの意見を聞き、それを基に他の職員を評価するような状況では、優秀な職員ですら心が折れてしまうことがあります。
私自身の経験でも、管理者が好きな職員が作り話をして、他の職員を貶めるようなケースがありました。
例えば、「あの人は仕事が遅い」「チームワークが悪い」といった事実無根の発言が管理者の耳に入ると、それを鵜呑みにする管理者が現場で不平等な対応をするのです。
その結果、現場の空気が悪くなり、優秀な職員が見切りをつけて辞めていく――こんな事態を目の当たりにしたことが何度もあります。
さらに深刻なのは、こうした「好き嫌い」で判断される環境が、職場全体に不信感を生むことです。
職員同士の信頼関係が崩れるだけでなく、管理者に対する不信感も強まります。
「管理者に何を言っても無駄」「公平に見てもらえない」といった思いを抱いた職員たちが、退職という形で抗議するのは避けられません。
このような負のスパイラルを断ち切るには、管理者が感情ではなく事実に基づいて職員を評価し、公平な対応を心がけることが必要です。
突然「話せ」と言われても無理がある理由
「何か困っていることがあれば教えてください」という管理者からの声かけは一見、職員の意見を聞き入れようとしているように見えます。
しかし、普段から職員の話を聞く習慣がない管理者が、突然「何かありますか?」と聞いたところで、職員が本音を話すことはほとんどありません。
それどころか、職員の側では「どうせ聞くだけで、何もしてくれない」と感じてしまうことが多いのです。
また、管理者が掘り下げて聞く姿勢を持たない場合、職員が本音を話そうとしてもそれがうまく伝わらないことがあります。
「具体的に何が問題なのか」と聞かれても、職員の悩みは必ずしも簡単に言葉にできるものではありません。
介護現場では、業務の多忙さや人間関係の微妙なズレがストレスの原因になることが多いですが、こうした問題は一言で説明することが難しいものです。
さらに、職員が「しんどい」と言っても、それを「精神的な弱さ」や「怠け」と受け取られてしまう恐れがあるため、話すことをためらうケースもあります。
管理者が問題の本質を理解するためには、日頃から職員との信頼関係を築くことが重要。
ただ形だけで「意見を聞く」のではなく、職員が安心して話せる環境を作る努力を怠ってはいけません。
信頼される職員が背負う「見えない負担」
介護現場で「信頼される職員」とされる人たちは、管理者や同僚から多くの期待を寄せられる一方で、その期待が負担になっていることがあります。
特に、「この人なら大丈夫」と思われる職員には、自然と多くの業務や責任が集中する傾向があります。
しかし、それが長期的に続くと、心身ともに疲弊してしまうのは避けられません。
信頼されている職員は、自分が抱える業務量や負担について他人に相談しにくい立場にあります。
「自分が言えば周囲に迷惑がかかる」「頼られる存在である自分が弱音を吐くのは格好悪い」と感じるからです。
その結果、職員が一人で抱え込み続け、限界を迎えて辞めてしまう――このパターンは非常に多くの現場で見られます。
また、こうした職員が負担を抱えている一方で、周囲の職員からは「信頼されていていいな」「自分より評価されている」といった羨望や嫉妬の目で見られることがあります。
それが人間関係の微妙なズレを生み、孤立感を深める要因になることもあります。
管理者は、「信頼」という言葉の裏側に隠された職員の負担や苦悩に目を向ける必要があります。
本当の信頼とは、一方的に期待を押し付けることではなく、相手の能力や気持ちを正しく理解し、適切なサポートを行うことです。
現場で必要なのは「気づき」と「寄り添い」
介護現場において、職員の離職率を下げるためには、管理者が日頃から職員の状態に気づき、寄り添う姿勢を持つことが不可欠。
特に、普段は何も言わない職員ほど、心の中で多くの不満や不安を抱えている可能性があり、その小さなサインを見逃さないことが、職員を守る第一歩です。
例えば、いつも笑顔で仕事をしている職員が突然口数が少なくなったり、ミスが増えたりするような変化があれば、それは心の中で何かしらの問題を抱えているサインかもしれません。
また、職員の様子を観察するだけでなく、普段から話しやすい環境を作る努力も重要です。
「ちょっとした相談がしやすい」「話を聞いてもらえる」という安心感があれば、職員も管理者に意見を言いやすくなります。
まとめ
介護現場での問題を解決するためには、管理者と職員が一体となって取り組む必要があります。
管理者は「信頼」を過剰な期待と混同せず、職員一人一人の声に耳を傾ける姿勢を持つことが重要です。
また、職員側も「しんどい」と感じた時には、無理をせずにそれを伝える勇気を持つことが求められます。
理想的な職場環境とは、全ての職員が安心して働ける場所です。
そのためには、管理者が公平で透明性のある対応を心がけ、職員同士もお互いを尊重し合う関係を築くことが大切です。
一人一人が「ここで働き続けたい」と思えるような環境作りを目指して、共に努力していきましょう。