他業種に比べて転職しやすいといわれている介護職ですが、近年では介護施設の閉鎖が続出しており「仕事がなければ、とりあえず介護職にでも」のような状況ではなくなりつつあります。
そこで今回は「人手不足による介護施設の閉鎖」と「人手不足の介護施設への転職事情」について解説していきます。
記事の後半では「人手不足の介護施設へ転職するメリット」についても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
介護施設が人手不足で閉鎖に!
「給料はそれほど高くないけど、倒産する心配がないので安定している」
たしかに数年前までは、介護施設の経営は安定していたといえるでしょう
しかし近年の感染症の感染拡大やIT技術の進化による働き方の変化の影響から、介護施設の経営が安定するという時代ではなくなりつつあります。
介護施設の経営が安定しない理由は複数の要因があるのですが、もっとも大きな要因として「人手不足」が挙げられます。
厚生労働省の調査によると、今後介護サービスの利用者は増加する一方で、それに伴い介護事業所の数は右肩上がりに増える見込みとのことです。
厚生労働省 介護サービス基盤整備についてより
介護事業所が増えるということは、介護施設で働く介護人材も当然必要になります。
しかし今後さらに必要となる介護人材ですが、すでに現時点で介護施設の人手不足は深刻化しています。
そして近年、この介護施設の人手不足が原因で介護施設の閉鎖が急増しているのです。
ではなぜ、介護施設が閉鎖しなくてはならないほどの人手不足がここまで深刻化しているのでしょうか?
本当に人手不足が原因で介護施設が閉鎖しているのでしょうか?
介護施設の閉鎖には介護業界特有の原因があるといえます
ここからは介護施設を閉鎖にまで追い込んでいる人手不足について、またその原因を解説していきます。
人手不足になっている主な原因は次のとおりです。
・少子高齢化問題
・採用が難しい
・離職率の高さ
それぞれ順番に解説していきます。
少子高齢化問題
介護施設が人手不足になっている原因には「小子高齢化問題」が根元にあります
これは日本全体が抱える問題のなかでも、特に介護業界に大きな影響を与えている問題でもあり、2025年には「団塊の世代」が75歳以上となり、さらに介護人材が不足すると予想されている「2025年問題」についてもこの少子高齢化が大きく影響しているといえます。
「令和2年度版高齢化社会白書」によると、令和元年10月1 日時点の日本の総人口は1億2,617万人となっており、そのうちの65歳以上の人口は3,589万人にものぼるとのことです。
この数値は日本の総人口の高齢者の割合が28.4%であることを意味しており、日本人の4人に1人以上は高齢者ということになります。
また令和47年(2065年)には高齢化率が38.4%となり、実に日本国民の2.6人に1人が高齢者になると推計されています。
参考 厚生労働省「令和2年度版 高齢社会白書」より
このように今後は若年者が減少し高齢者が増加する「超高齢化社会」が加速することから、介護施設の人手不足がさらに深刻化することは容易に予想することができるでしょう。
採用が難しい
介護施設が人手不足になっている2つ目の原因としては、介護人材の採用が難しくなっていることが挙げられます。
参考 福祉人材確保対策検討会 平成26年「介護人材の確保について」より
採用が難しくなっている理由は複数ありますが、主な理由は「給与の低さ」と「他業種への人材の流入」が大きな原因だといえるでしょう
介護事業所の収入が介護保険制度で決められた範囲しかないことを考えると仕方のないことなのですが、介護職は仕事の大変さの割に給与が低いという特徴があります。
ある程度事業所の収入が決められているということは、介護職の給与も上がりづらい仕組みになっているので、就職を検討している際に給与の上がりづらい介護職を選ぶ理由はほとんどないといえるのではないでしょうか。
また国が推進している「働き方改革」の影響で、個人の働き方の多様化が進んでいる現代において、介護職よりも魅力的な働き方が可能な他職種へ人材が流入しているのも、採用が難しくなっている原因のひとつだといえるでしょう。
離職率の高さ
介護施設が人手不足になっている3つ目の原因としては、離職率の高さが挙げられます
介護職に対して多くの方が「3k」や「人間関係が悪い」といった、ネガティブなイメージを持たれているかと思います。
3kとは労働環境や作業環境を表現したもので「キツい、汚い、危険」の3つの頭文字を合わせた言葉です。
そして介護の職場の人間関係が悪いというのはよく言われていることで、誰でも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
これらはすべてが事実だとは言い切れないものの、実際に上記のような実態があるのも事実です。
また介護労働安定センターが令和元年度に実施した「令和元年度介護労働実態調査事業所における介護労働実態調査」の結果によると、介護人材の離職率の高さは全産業の平均よりも高くなっています。
このように、離職率が高いことも介護施設が人材不足になっている原因のひとつだといえます。
以上の3つが、介護施設が人手不足になっている主な原因です。
ここで「人手不足なら誰でも簡単に介護施設に転職しやすいのでは?」と考えるかもしれませんが、実は現在の介護業界への転職は以前に比べて難しい状況になっています。
数年前の介護業界と、現在の介護業界の状況は一変しており「誰でも簡単に転職できる」ような状況ではなくなっているのです。
介護施設が人手不足だから転職しやすいは大間違い!
介護施設への転職が難しくなっているのは、近年猛威をふるっている新型コロナウイルスの影響が強いといえます
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、デイサービスなどの通所介護事業所を中心に休業や閉鎖、規模を縮小する事業所が急増しているからです。
これは小中規模の事業所の経営者にとっては大きな痛手だといえます。
新たな人材を募集している状況ではなく、現在勤務している介護職員の雇用の継続さえも危うい状況だといえるでしょう。
このような状況がいつまで続くかは不明ですが、現在の介護施設への転職は以前に比べて難しくなっていることは事実だといえます。
「それでも介護施設へ転職したい!」
上記のように考える方向けに、ここからは人手不足の介護施設に転職するメリットを解説していきます。
人手不足の介護施設に転職するメリットは?
人手不足の介護施設に転職するメリットは「他業種に比べて転職できる年齢層が広い」ことだといえます
介護職は他業種の転職に比べると、転職できる年齢層が広いのが特徴です。
事業所にもよりますが、介護職は平均年齢の高い職場が多いですし、50代で他業種から転職してくる方も珍しくはありません。
他業種では年齢を重ねるほどに転職は難しくなるのが常識ですが、介護職において年齢はむしろ人生経験と評価され、転職の際に有利に働くこともあるといえるでしょう。
実際に私が勤務している事業所では、61歳で介護未経験の方がパートとして採用されたことがあります。
このように介護施設への転職は、他業種の転職に比べてチャンスが多いのがメリットだといえます。
まとめ
今回は「人手不足による介護施設への影響」と「人手不足の介護施設への転職事情」について解説しました。
今後もますます高齢化が進み、介護施設の人手不足は深刻化することが懸念されています。
また離職率の高さや介護人材の確保が難しい点からも、さらに閉鎖する介護施設が増えることも予想されており、ますます介護業界を取り巻く環境は厳しくなっていくことでしょう。
しかし「ピンチはチャンス」という言葉があるように、この厳しい状況をチャンスと捉えて介護施設への転職を検討してみてはいかがでしょうか。